コラム

・法人成りしたけど、資産はどうやって引き継げばいいの?
・法人へ引き継ぐ資産の種類は?注意点は?
・引き継ぐ資産にまつわる税務関係について知りたい。

こんな悩みにお答えします。

法人成りしたものの、資産の種類を把握して、それぞれの引き継ぎ方法を検討するって本当に大変ですよね。

とはいえ、資産を適当に引き継いでしまうと、思わぬ税金を払うハメになったり、不要な仕事に見舞われかねません。

何事も事前の対策が肝心。
これまでいただいた多く税務に関する相談をもとに、下記の内容を中心にお伝えします。

法人へ資産を引き継ぐ3つの方法
4種類の資産の特徴と押さえておきたい注意点
引き継いだ資産を賢く償却する3つの方法

後悔したり損しないためにも、ぜひ最後までチェックしてくださいね。

【法人成り】資産を引き継ぐ3つの方法

資産の引き継ぎ方法は主に3つです。
・売買契約
・現物出資
・賃貸借契約

税務上は「個人」と「法人」を区別して、別人格として扱います。
ですので、個人・法人間の売買取引として会計・税務処理をしなければなりません。

資産を引き継ぐことで個人には所得税が課税され、法人は必要経費として処理します。

では、くわしく見ていきましょう。

売買契約

結論、もっとも一般的な資産の引き継ぎ方法です。
というのも、売買契約書を交わすのみなので、手続きが簡単だからです。

売買価額は、中古市場などの時価(相場)を基準にします。

個人には譲渡に伴い、譲渡所得が発生します。
ただし、無償でする譲渡は贈与になり、結果的には時価で譲渡したものと扱われ、課税の対象になるのでご注意を。

また、個人から法人へ売買するので、法人には買い取る資金が必要です。
買い取った資産は減価償却費として経費に計上できます。
法人成り直後で法人に資金がない場合は、法人から個人への未払金として処理します。

税務調査では売買による譲渡を証明する必要がありますので、きちんと売買契約書を作成しましょう。時価のわかる見積書などの資料も残しておきましょう。
  

現物出資

現物出資は、下記のような金銭以外の資産を法人へ引き継ぐ方法です。
・動産(パソコン、車など)
・不動産(土地、建物など)
・有価証券(債券など)
・無形資産

現物出資は金銭出資として扱われますので、個人には譲渡所得が発生します。

法人は資産を時価で受け入れるため資本金が増えます。

しかし、自由に使えるキャッシュが増えるわけではありません。
手続きが煩雑ですし、手間がかかるデメリットもあります。

現物出資の注意点はこちら。
・定款に現物出資をする発起人の氏名などの情報を記載する必要がある
・裁判所の選任した検査役によるチェックを受ける必要がある

ただし、次の場合には検査役の調査を省略することができます。
・現物出資する財産の総額が500万円以下
・出資する財産が市場価格のある有価証券で、定款に記載した価額が市場価格以下
・現物出資する財産の価額が相当であると弁護士・税理士などの証明を受けた場合
 ※不動産については不動産鑑定士の鑑定評価も必要

売買に比べると手間や手続きが多いので、慎重に判断しましょう。

賃貸借契約

賃貸借契約書を交わし、法人から賃借料を受け取る方法です。

『土地・建物』のような、売買による引き継ぎがしにくい場合に使われます。

賃料は売買と同じく、時価をベースに価額を決めます。
土地や建物は周辺の相場を参考にして、適正な賃料を設定しましょう。

賃貸借なので、
・所有権は個人のまま法人にモノを貸し出す
・法人は個人へ毎月の賃借料を支払う

というように、土地や建物などの不動産を貸し出すと、個人には不動産所得が発生します。
貸し出す限りは、個人事業主として確定申告を続ける必要があります。

賃貸借契約は、引き継ぐ資産の種類によって検討しましょう。

ここまでが資産の引き継ぎ方法です。
次は資産の種類について解説します。

法人へ引き継ぐ資産は4種類

主な引き継ぐ資産としては、下記の4種類です。
・棚卸資産
・減価償却資産
・債権
・土地・建物

それぞれの取引価額(引き継ぐ資産の時価)の考え方も押さえておきましょう。

棚卸資産(商品や製品などの在庫)

一般的には、通常の取引価額(販売価額)で売買して引き継ぎます。
なお、不良在庫の引き継ぎは認められていません。

個人には事業所得が課税され、法人側は時価で受け入れます。
譲り受けた価額が時価よりも低い場合の差額は受贈益として扱われますが、事業所得の計算上、「通常の販売価格×70%」程度の金額までであれば値下げが認められています。

ちなみに、下記のような価値が低下しているものは処分可能価格(時価)を取引価額として問題ありません。
・季節外れの商品
・型落ちの商品
・破損した商品

ただし、不動産業等は除きますのでご注意を。

法人による棚卸資産の買取りは通常の販売価額の70%程度の範囲で、合理的な金額で決めましょう。

減価償却資産(設備などの固定資産)

こちらも売買での引き継ぎが一般的です。

時価は下記を参考に決めることが多いです。
・固定資産税評価額
・販売業者の見積金額
・類似物件・商品の市場流通価額

個人には事業所得ではなく、譲渡所得が課税されます。

なお、次項でくわしく解説しますが、『みなし譲渡所得課税』にもご注意ください。

法人側では「再取得価額×旧定率法未償却残額割合=時価」とする、法人税基本通達の規定がありますので、実務上は帳簿価額による譲渡で大きな問題になることはありません。

また、引き継いだ資産は『中古資産』としての耐用年数で償却します。
新品と比べて短い期間で償却できますので、早期に費用化できるメリットも。

特殊な機械など時価の算定が難しい場合など、判断に困るときは税理士への相談も視野に入れましょう。

債権・債務

下記のような債権・債務は、実務上は引き継がないことが多いです。
・売掛金
・買掛金
・未払金
・預かり金 など

債権者の同意や取引先への名義変更通知など、手続きが煩雑ケースが多く手間がかかるからです。

引き継ぐ場合は『簿価=時価』として引き継ぐことが多いので、譲渡損益は発生しません。
所得が発生する際には事業所得として扱われます。

なお、不良債権の引き継ぎはできません。
貸し倒れの事実がある債権を引き継いだ場合、法人から利益を受けたと見なされて課税される恐れもありますのでご注意を。

引き継ぐ場合は、確実に回収できる金額にしましょう。

土地・建物

賃貸借契約で引き継がれることが多いです。

理由としては、
・不動産取得税
・登記費用
・抵当権の抹消費用

などのコストがかかるからです。

譲渡するにしても建物だけ譲渡し、土地は譲渡しないことも多いです。

個人の不動産の簿価(取得費)が時価より低い場合などは、個人の側では譲渡所得が分離課税として課税されます。

なお、引き継ぐ土地・建物について金融機関から融資を受けている場合は、金融機関の意向を確認しましょう。個人から法人への名義変更を求められるケースもあります。

法人へ時価と異なる金額で資産を引き継ぐときの注意点

引き継ぎ価額は低すぎるのも高すぎるのも良くありません。

『低廉譲渡』『高額譲渡』を例に挙げて説明します。

低廉譲渡(みなし譲渡所得課税に要注意)した場合

著しく低い金額で法人へ引き継ぐ場合を指します。
たとえば、「個人の売上を低くしたい」などです。

しかし、みなし譲渡所得課税にはご留意ください。

【みなし譲渡所得課税とは】
・個人が法人へ無償で譲渡(贈与)した場合
・個人が法人へ著しく低い価額(時価の2分の1未満)で譲渡した場合
に、本来の時価で譲渡したとみなして、個人には譲渡所得が課税される仕組みです。

なお、対象になるのは譲渡所得です(※事業として売却したときの所得は除く)。

これは本来の負担すべき所得税の回避を防ぐことを目的としています。
また、時価と低くした金額との差額は、『受増益』として法人側で収益計上する必要も発生しますのでご注意ください。

高額譲渡した場合

時価よりも高い金額で引き継ぐ場合を指します。
たとえば、個人側に多くのお金を残したいなどの理由で。

もちろん個人側では所得税が課税されます。
時価と高くした金額との差額は法人から個人への『寄付金』として扱われますので、法人税が課税されます。

法人が少額資産を賢く償却できる3つの方法

下記の3つの方法を活用すれば、法人は引き継いだ資産を賢くお得に償却できます。

・少額減価償却資産
・一括償却資産
・少額減価償却資産の特例

これらは通常の減価償却よりも早い段階で費用計上できる共通点があります。

【少額減価償却資産】
・使用可能期間が1年未満のものや、取得価額が10万円以下の資産が対象
・一括して償却費を計上できる
・取得価額が10万円以下のうち、少額重要資産に該当するものは譲渡所得
 ただし、反復継続して売買するようなものは事業所得

【一括償却資産】
・取得価額が10万円以上20万円以下の資産が対象
・法定耐用年数に関係なく、取得価額の3分の1を3年間に渡って費用計上できる

【少額減価償却資産の特例】
・中小企業が対象
・取得価額が10万円以上30万円未満の資産が対象
・年間300万円まで一括して償却費を計上できる
 月数に応じて上限が決まる(たとえば事業年度が6ヶ月だと上限が150万円)
・『少額減価償却資産の明細』や『適用額明細書』を青色申告書へ添付する必要あり
・償却資産税が課税される


それぞれの特徴を押さえたうえで、引き継いだ資産は賢く償却しましょう。

法人成りで引き継いだ資産には消費税がかかる

対価が伴う下記の資産の引き継ぎは、消費税の課税対象取引に該当します。
・売買による譲渡
・現物出資
・贈与

もちろん、賃貸の場合も同様。
個人側は資産を貸して得られる賃貸料に消費税がかかります。

ただし、すべての取り引きに消費税がかかるわけではありません。
以下は消費税のかからない取り引きです。

①土地、および土地の上に存する権利
 土地と建物を一括して譲渡する場合、建物部分は課税対象取引

②有価証券
 預金、貸付金、売掛金等の金銭債権を含みます

③支払手段
 現金、小切手、約束手形など

④物品切手
 商品券、図書券、プリペードカードなど

⑤社会福祉事業又は更生保護事業等としての資産、身体障害者物品

⑥土地の貸付

⑦住宅の貸付
 ・社宅等居住用建物の貸付は非課税取引
 ・事業用建物の貸付は課税対象取引

免税事業者でない限り、消費税が発生しますので忘れずに納付しましょう。

まとめ

今回は法人成りに伴う資産の引き継ぎ方法を中心にお話しました。

以下、本記事の振り返りです。

・資産の引き継ぎ方法は3つ(売買、現物出資・賃貸借)あるが、売買による譲渡が一般的
・資産は大きく4種類(棚卸資産、減価償却資産、債権・債務、土地・建物)
・引き継ぐ資産の価額は高すぎても低すぎても、思わぬ税金が発生する
・課税事業者は消費税の納付を忘れずに

個人・法人の状況によっては、臨機応変に対応する必要もあるでしょう。
その際は、税理士などへの相談も視野に入れることをおすすめします。

法人へ適切に資産を引き継ぎ、法人として素晴らしいスタートを切りましょう。



関連コラム:個人事業主が法人成りしたときの注意点


監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属


大学卒業後、一般企業を経て
 平成15年4月 シン中央会計 入社
 平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
 平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任

主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。


※本サイトに掲載の内容は、令和5年6月現在の法令に基づき作成しております。

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・家族への役員報酬はいくらまで認められるの?
・家族へ役員報酬を支払うメリット・デメリットは?
・家族に対する役員報酬の注意点も知りたい

こんな悩みにお答えします。

個人事業主による事業専従者への給与とは異なり、法人にこそ許される役員報酬。
法人を設立したからには家族の協力も得つつ、節税なども検討したいところですよね。

結論、税制面でのメリットなども多いため、家族へ役員報酬は早めの検討をおすすめします。

とはいえ、『どれくらい報酬を払っていいのか?』という点を押さえないと、税務調査での指摘も受けやすく、金銭的に取り返しがつかなくなることも。

本記事の前半では家族への役員報酬についての考え方を、後半ではメリット・デメリットを深掘りして説明します。

容易ではない家族への役員報酬の金額設定。
だからこそ本記事を参考にしながら、健全な家族経営と適切な節税対策をしていきましょう。

家族に対する役員報酬はいくらまで認められる?

結論、明確な基準はありません。

だからこそ、役員報酬は金額設定をコントロールしやすく、税務調査でも目をつけられるポイントになります。

まずは基本の考え方を押さえていきましょう。

役員報酬の決め方に明確な基準はない

「役員報酬が対価として相当と認められる金額かどうか」がポイントです。

法律では具体的な金額や基準について規定されていないからです。

では、役員報酬を決める2つの基準を説明します。

1つ目は「実質基準」です。

・職務内容
・勤務実態
・勤務年数
・業務への責任割合
・年齢や会社への貢献度
・会社の業績
・従業員の給与とのバランス
・同業他社との比較 など

これらをもとに判断していきます。

2つ目は形式基準です。

定款や株主総会の決議で報酬金額の限度額を決めている場合は、その限度額が上限となります。

とはいえ、
「あくまで基準でしょ?わかりづらいよ...」
という声に応えるべく、実務的な考え方を2つ紹介します。

①家族以外の役員報酬を参考にする
家族以外の役員がいる場合は、その役員と同じ金額水準を目安に考えましょう。

②過去の税務調査結果や判例を参考にする
役員がすべて親族の場合は、①の方法は使えません。
なので、過去のデータを参考にするとよいですね。

いずれにせよ、明確な基準や根拠に自信がない場合は、税理士などの専門家にアドバイスを求めるのがおすすめです。

明確な定義はないからこそ根拠が必要

役員報酬として決めた金額には、きちんとした理由が求められます。

注意点は2つ。

【注意点①】勤務実態はきちんとあるか

家族が役員報酬に見合った働きをしているかという実態が必要です。

従業員とは異なり、役員は時間労働をしなくても報酬が得られるので、いかに経営に関わっているかという点が重要になります。

具体的には、

・家族の発言がどのように会社経営に貢献しているか
・役員としての活動がどのようなものか

これらを議事録などに残し、証明できるようにしましょう。

多少職務の内容があいまいでも、過去の裁判例では『よき相談相手』として年間報酬200万円程度は妥当とされた事例もありますが、参考までに。

【注意点②】役員報酬の金額はいくらでもよいわけではない

金額の妥当性も役員の実態に左右されます。

・いくらまで認められるか?
よりも、

・どれくらい会社へ貢献しているか?
が重視されます。

つまり、勤務実態があるうえで、役員としての会社に対する貢献度合いも肝心です。

たとえば、役員として会社経営に携わり、業績が向上したなどの貢献度が評価できれば、家族への役員報酬は社長の報酬額の7割前後の水準を妥当とする考え方もあります。

また、家族といっても以下のケースでは税務署から否認されています。
・大学生である息子を役員として月に数万円支払っていた
税務署員が息子さんに「どんな業務をしているの?」などと質問した際に答えられないようでは、名ばかりの役員としか思われません。

とはいえ、会社への貢献が明確であり、職務をまっとうした形跡をきちんと証明できる場合は高額な役員報酬を設定しても問題ないでしょう。

役員報酬は定期同額の場合のみ費用になる

原則、役員報酬は期中に変更することはできません。
定期同額の考えに基づき、変更できるのは1年に1回のみ。

変更できる時期は決算期から3ヶ月以内と決められています。

不当な利益操作による節税などを防止する狙いがあるからですね。

税額に大きな影響を与える役員報酬ですが、事業年度における売り上げ予測などを綿密に行って設定しましょう。

家族に役員報酬を支給するメリット6選

下記の6つを順番に解説します。

①所得分散させて節税できる
②贈与税・相続税対策ができる
③老後の年金額が増える
④退職金を準備すると節税できる
⑤倒産リスクに対処できる
⑥高額な報酬を設定できる

【メリット①】所得分散させて節税できる

役員報酬として家族に配分すれば、一人当たりの所得税が少なくなります。

社長ひとりで多額の報酬を受け取るよりも、家族で所得を分散した方が所得税率が低くなるからです。

所得税は累進課税制度なので、個人の所得の大きさに応じて5%〜最大で45%の税率が適用されます。

では、比較するために下記の計算をご覧ください。

【前提条件】
・給与所得控除、基礎控除、社会保険料を考慮
※ 配偶者控除は適用不可、扶養控除は考慮なし

【パターン①】社長が2,000万円の場合
役員報酬:20,000,000円
給与所得控除:△1,950,000円
社会保険料概算:△1,680,000円
基礎控除:△480,000円
所得:15,890,000円
(15,890,000円×33%)-1,536,000円=3,707,700円

【パターン②】家族へ分散した場合
・社長
役員報酬:10,000,000円
給与所得控除:△1,950,000円
社会保険料概算:△1,290,000円
基礎控除:△480,000円
所得:6,280,000円
(6,280,000円×20%)-427,500円=828,500円

・配偶者
役員報酬:6,000,000円
給与所得控除:△1,640,000円
社会保険料概算:△898,000円
基礎控除:△480,000円
所得:2,982,000円
(2,982,000円×10%)-97,500円=200,700円

・長男
役員報酬:4,000,000円
給与所得控除:△1,240,000円
社会保険料概算:△610,000円
基礎控除:△480,000円
所得:1,670,000円
1,670,000円×5%=83,500円

所得税の差額:△2,595,000円
社会保険料の差額:1,118,000円
※会社負担も合わせると2,272,000円程度の負担が必要

役員報酬を社長ひとりではなく家族へ配分することで、所得税は2,595,000円もの節税につながります。

一方で社会保険料の負担は増えてしまいます。
しかし、所得税と差し引きしても節税効果が見込めるうえに、メリット③でもお伝えしますが将来的に年金額が増加しますので、表面的な数字以上のメリットがあるでしょう。

このように社長一家としての収入は同じでも所得分散すれば、結果として家族全体の手取りは多くなります。

【メリット②】贈与税・相続税対策ができる

社長1人の財産として家族へ贈与・相続するよりも、生前に役員報酬として家族に支給した方が節税につながります。

所得税と同じく贈与税・相続税も累進課税制度です。
つまり、社長1人の財産が大きくなるほど課税される割合が高まります。

生前に資産を個人に集中させずに、役員報酬として分散させた方が、贈与税や相続税をかけずに財産を移転できるわけです。

【メリット③】老後の年金額が増える

社会保険への加入条件を満たせば、厚生年金部分を受け取れるからです。

社長の配偶者を例に説明します。

社会保険では、主婦などの第2号被保険者に扶養されている配偶者は第3号被保険者に該当します。
ですが、役員報酬が年間130万円を超えると第2号被保険者になり、厚生年金への加入が認められます。

厚生年金が上乗せされた形で年金受給できますので、結果的に老後の年金が増えます。

【注意点】

非常勤役員の場合は社会保険への加入はできません。

また、常勤と非常勤に明確な定義の違いはありません。

・勤務日数
・報酬
・監督権
など、複数の要素から総合的に判断されます。

非常勤でも常勤とみなされるケースがありますし、その際は社会保険料を払う必要が発生します。意思に反して保険料の納付義務が生じることもありますのでご注意を。

実務的な判断基準は税理士などの専門家に相談するのも対策のひとつでしょう。

【メリット④】退職金を準備すると節税できる

退職金は用意する側と受け取る側でそれぞれにメリットがあります。

【退職金を用意する側】

役員への退職金は経費計上が認められます。

役員に対する退職金の計算式は、「最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率」です。
退職するときの役員報酬が高く、長く働いていると、退職金も多くなります。

ちなみに、「功績倍率」は役職ごとで確定した数値はありません。
あくまで参考値にはなりますが、具体例としては下記のとおりです。
参考にしてみてください。

・社長 3.0
・専務 2.4
・常務 2.2
・取締役 1.8
・監査役 1.6

おすすめの退職金の準備方法は『小規模企業共済』

これは中小機構による退職金の積立制度です。
掛金はすべて所得控除できるので、大きな節税効果が見込めます。

【退職金を受け取る側】

退職所得控除による節税メリットがあります。

退職所得控除は以下の式で計算します。

・勤続年数が20年以下:40万円×勤続年数(最低80万円)
 勤続年数が20年超:800万円+70万円×(勤続年数ー20年)

さらに、上記計算式で出た金額には2分の1を乗じるので、半分になります。

単純に役員報酬として受け取る場合と比較すると、大きな節税につながることは言うまでもありません。

【注意点】

過大な役員退職金には要注意。
税務署から否認される可能性があるからです。
根拠のある金額を設定するようにしましょう。

【メリット⑤】倒産リスクに対処できる

生活防衛資金を作れるからです。

たとえば、社長が自己破産しても、連帯保証人などに該当しない限り、債権者は配偶者の資産にまでは手を出しません。

リスクに備えて家族へ生活資金をプールするのに役員報酬が役立ちます。

【メリット⑥】高額な報酬を設定できる

従業員への給与とは異なり、金額設定は自由だからです。

妥当性のある説明根拠が整うのであれば、大きなメリットと言えるでしょう。

【注意点】

税務調査で妥当と判断される理由や根拠をそろえましょう。

家族に役員報酬を支給するデメリットは2つだけ

【デメリット①】採用活動に支障が出るおそれがある


家族経営への世間のイメージはあまり良くないことも。

・役員になれるのは家族だけ。最初から出世の道は閉ざされている
・儲けの大部分は役員がとって、いくら働いても従業員の給料は安月給

このような印象から、新卒が避けることも考えられます。
また、社員の士気が下がる懸念点も。

家族経営はブラックな印象を与えかねず、採用活動に支障をきたすおそれがあるでしょう。

【デメリット②】業績悪化時に不利になる

基本的には、いくら業績が悪化しても定期同額というルールに従い、年間に予定する役員報酬を支払う必要があるからです。

「業績が悪化したので役員報酬をコントロールしよう!」など、利益調整には使えません。

他にも、節税として決算前に役員報酬を上げて利益を押さえるなどはもってのほか。
もちろん業績が悪化したからといって、基本的に高額な役員報酬を下げることはできません。

【注意点】

どうしても期中に役員報酬の減額をする場合は、特段申告は必要ないものの、減額決議した総会の議事録などは準備しておきましょう。

また、下げた役員報酬は基本的に損金算入できませんが、「業績悪化改定事由」に該当する場合は認められるケースもあります。

役員報酬を減額する際は、納める法人税が増える場合がありますので気をつけましょう。

まとめ

今回は家族への役員報酬についての考え方とメリット・デメリットを注意点に絡めながら説明しました。

家族へ役員報酬を適切に準備できるならば、なるべく早い検討がおすすめです。
その理由は以下のとおり、メリットの多さにあります。

①所得分散させて節税できる
②贈与税・相続税対策ができる
③老後の年金額が増える
④退職金を準備すると節税できる
⑤倒産リスクに対処できる
⑥高額な報酬を設定できる

家族を役員にすると多くの金銭的なメリットがありますので、家族への役員報酬を積極的に考えてみてはいかがでしょうか。



関連コラム:役員報酬の決め方


監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属


大学卒業後、一般企業を経て
 平成15年4月 シン中央会計 入社
 平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
 平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任

主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。

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・家族への役員報酬はいくらまで認められるの?
・家族へ役員報酬を支払うメリット・デメリットは?
・家族に対する役員報酬の注意点も知りたい

こんな悩みにお答えします。

個人事業主による事業専従者への給与とは異なり、法人にこそ許される役員報酬。
法人を設立したからには家族の協力も得つつ、節税なども検討したいところですよね。

結論、税制面でのメリットなども多いため、家族へ役員報酬は早めの検討をおすすめします。

とはいえ、『どれくらい報酬を払っていいのか?』という点を押さえないと、税務調査での指摘も受けやすく、金銭的に取り返しがつかなくなることも。

本記事の前半では家族への役員報酬についての考え方を、後半ではメリット・デメリットを深掘りして説明します。

容易ではない家族への役員報酬の金額設定。
だからこそ本記事を参考にしながら、健全な家族経営と適切な節税対策をしていきましょう。

家族に対する役員報酬はいくらまで認められる?

結論、明確な基準はありません。

だからこそ、役員報酬は金額設定をコントロールしやすく、税務調査でも目をつけられるポイントになります。

まずは基本の考え方を押さえていきましょう。

役員報酬の決め方に明確な基準はない

「役員報酬が対価として相当と認められる金額かどうか」がポイントです。

法律では具体的な金額や基準について規定されていないからです。

では、役員報酬を決める2つの基準を説明します。

1つ目は「実質基準」です。

・職務内容
・勤務実態
・勤務年数
・業務への責任割合
・年齢や会社への貢献度
・会社の業績
・従業員の給与とのバランス
・同業他社との比較 など

これらをもとに判断していきます。

2つ目は形式基準です。

定款や株主総会の決議で報酬金額の限度額を決めている場合は、その限度額が上限となります。

とはいえ、
「あくまで基準でしょ?わかりづらいよ...」
という声に応えるべく、実務的な考え方を2つ紹介します。

①家族以外の役員報酬を参考にする
家族以外の役員がいる場合は、その役員と同じ金額水準を目安に考えましょう。

②過去の税務調査結果や判例を参考にする
役員がすべて親族の場合は、①の方法は使えません。
なので、過去のデータを参考にするとよいですね。

いずれにせよ、明確な基準や根拠に自信がない場合は、税理士などの専門家にアドバイスを求めるのがおすすめです。

明確な定義はないからこそ根拠が必要

役員報酬として決めた金額には、きちんとした理由が求められます。

注意点は2つ。

【注意点①】勤務実態はきちんとあるか

家族が役員報酬に見合った働きをしているかという実態が必要です。

従業員とは異なり、役員は時間労働をしなくても報酬が得られるので、いかに経営に関わっているかという点が重要になります。

具体的には、

・家族の発言がどのように会社経営に貢献しているか
・役員としての活動がどのようなものか

これらを議事録などに残し、証明できるようにしましょう。

多少職務の内容があいまいでも、過去の裁判例では『よき相談相手』として年間報酬200万円程度は妥当とされた事例もありますが、参考までに。

【注意点②】役員報酬の金額はいくらでもよいわけではない

金額の妥当性も役員の実態に左右されます。

・いくらまで認められるか?
よりも、

・どれくらい会社へ貢献しているか?
が重視されます。

つまり、勤務実態があるうえで、役員としての会社に対する貢献度合いも肝心です。

たとえば、役員として会社経営に携わり、業績が向上したなどの貢献度が評価できれば、家族への役員報酬は社長の報酬額の7割前後の水準を妥当とする考え方もあります。

また、家族といっても以下のケースでは税務署から否認されています。
・大学生である息子を役員として月に数万円支払っていた
税務署員が息子さんに「どんな業務をしているの?」などと質問した際に答えられないようでは、名ばかりの役員としか思われません。

とはいえ、会社への貢献が明確であり、職務をまっとうした形跡をきちんと証明できる場合は高額な役員報酬を設定しても問題ないでしょう。

役員報酬は定期同額の場合のみ費用になる

原則、役員報酬は期中に変更することはできません。
定期同額の考えに基づき、変更できるのは1年に1回のみ。

変更できる時期は決算期から3ヶ月以内と決められています。

不当な利益操作による節税などを防止する狙いがあるからですね。

税額に大きな影響を与える役員報酬ですが、事業年度における売り上げ予測などを綿密に行って設定しましょう。

家族に役員報酬を支給するメリット6選

下記の6つを順番に解説します。

①所得分散させて節税できる
②贈与税・相続税対策ができる
③老後の年金額が増える
④退職金を準備すると節税できる
⑤倒産リスクに対処できる
⑥高額な報酬を設定できる

【メリット①】所得分散させて節税できる

役員報酬として家族に配分すれば、一人当たりの所得税が少なくなります。

社長ひとりで多額の報酬を受け取るよりも、家族で所得を分散した方が所得税率が低くなるからです。

所得税は累進課税制度なので、個人の所得の大きさに応じて5%〜最大で45%の税率が適用されます。

では、比較するために下記の計算をご覧ください。

【前提条件】
・給与所得控除、基礎控除、社会保険料を考慮
※ 配偶者控除は適用不可、扶養控除は考慮なし

【パターン①】社長が2,000万円の場合
役員報酬:20,000,000円
給与所得控除:△1,950,000円
社会保険料概算:△1,680,000円
基礎控除:△480,000円
所得:15,890,000円
(15,890,000円×33%)-1,536,000円=3,707,700円

【パターン②】家族へ分散した場合
・社長
役員報酬:10,000,000円
給与所得控除:△1,950,000円
社会保険料概算:△1,290,000円
基礎控除:△480,000円
所得:6,280,000円
(6,280,000円×20%)-427,500円=828,500円

・配偶者
役員報酬:6,000,000円
給与所得控除:△1,640,000円
社会保険料概算:△898,000円
基礎控除:△480,000円
所得:2,982,000円
(2,982,000円×10%)-97,500円=200,700円

・長男
役員報酬:4,000,000円
給与所得控除:△1,240,000円
社会保険料概算:△610,000円
基礎控除:△480,000円
所得:1,670,000円
1,670,000円×5%=83,500円

所得税の差額:△2,595,000円
社会保険料の差額:1,118,000円
※会社負担も合わせると2,272,000円程度の負担が必要

役員報酬を社長ひとりではなく家族へ配分することで、所得税は2,595,000円もの節税につながります。

一方で社会保険料の負担は増えてしまいます。
しかし、所得税と差し引きしても節税効果が見込めるうえに、メリット③でもお伝えしますが将来的に年金額が増加しますので、表面的な数字以上のメリットがあるでしょう。

このように社長一家としての収入は同じでも所得分散すれば、結果として家族全体の手取りは多くなります。

【メリット②】贈与税・相続税対策ができる

社長1人の財産として家族へ贈与・相続するよりも、生前に役員報酬として家族に支給した方が節税につながります。

所得税と同じく贈与税・相続税も累進課税制度です。
つまり、社長1人の財産が大きくなるほど課税される割合が高まります。

生前に資産を個人に集中させずに、役員報酬として分散させた方が、贈与税や相続税をかけずに財産を移転できるわけです。

【メリット③】老後の年金額が増える

社会保険への加入条件を満たせば、厚生年金部分を受け取れるからです。

社長の配偶者を例に説明します。

社会保険では、主婦などの第2号被保険者に扶養されている配偶者は第3号被保険者に該当します。
ですが、役員報酬が年間130万円を超えると第2号被保険者になり、厚生年金への加入が認められます。

厚生年金が上乗せされた形で年金受給できますので、結果的に老後の年金が増えます。

【注意点】

非常勤役員の場合は社会保険への加入はできません。

また、常勤と非常勤に明確な定義の違いはありません。

・勤務日数
・報酬
・監督権
など、複数の要素から総合的に判断されます。

非常勤でも常勤とみなされるケースがありますし、その際は社会保険料を払う必要が発生します。意思に反して保険料の納付義務が生じることもありますのでご注意を。

実務的な判断基準は税理士などの専門家に相談するのも対策のひとつでしょう。

【メリット④】退職金を準備すると節税できる

退職金は用意する側と受け取る側でそれぞれにメリットがあります。

【退職金を用意する側】

役員への退職金は経費計上が認められます。

役員に対する退職金の計算式は、「最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率」です。
退職するときの役員報酬が高く、長く働いていると、退職金も多くなります。

ちなみに、「功績倍率」は役職ごとで確定した数値はありません。
あくまで参考値にはなりますが、具体例としては下記のとおりです。
参考にしてみてください。

・社長 3.0
・専務 2.4
・常務 2.2
・取締役 1.8
・監査役 1.6

おすすめの退職金の準備方法は『小規模企業共済』

これは中小機構による退職金の積立制度です。
掛金はすべて所得控除できるので、大きな節税効果が見込めます。

【退職金を受け取る側】

退職所得控除による節税メリットがあります。

退職所得控除は以下の式で計算します。

・勤続年数が20年以下:40万円×勤続年数(最低80万円)
 勤続年数が20年超:800万円+70万円×(勤続年数ー20年)

さらに、上記計算式で出た金額には2分の1を乗じるので、半分になります。

単純に役員報酬として受け取る場合と比較すると、大きな節税につながることは言うまでもありません。

【注意点】

過大な役員退職金には要注意。
税務署から否認される可能性があるからです。
根拠のある金額を設定するようにしましょう。

【メリット⑤】倒産リスクに対処できる

生活防衛資金を作れるからです。

たとえば、社長が自己破産しても、連帯保証人などに該当しない限り、債権者は配偶者の資産にまでは手を出しません。

リスクに備えて家族へ生活資金をプールするのに役員報酬が役立ちます。

【メリット⑥】高額な報酬を設定できる

従業員への給与とは異なり、金額設定は自由だからです。

妥当性のある説明根拠が整うのであれば、大きなメリットと言えるでしょう。

【注意点】

税務調査で妥当と判断される理由や根拠をそろえましょう。

家族に役員報酬を支給するデメリットは2つだけ

【デメリット①】採用活動に支障が出るおそれがある


家族経営への世間のイメージはあまり良くないことも。

・役員になれるのは家族だけ。最初から出世の道は閉ざされている
・儲けの大部分は役員がとって、いくら働いても従業員の給料は安月給

このような印象から、新卒が避けることも考えられます。
また、社員の士気が下がる懸念点も。

家族経営はブラックな印象を与えかねず、採用活動に支障をきたすおそれがあるでしょう。

【デメリット②】業績悪化時に不利になる

基本的には、いくら業績が悪化しても定期同額というルールに従い、年間に予定する役員報酬を支払う必要があるからです。

「業績が悪化したので役員報酬をコントロールしよう!」など、利益調整には使えません。

他にも、節税として決算前に役員報酬を上げて利益を押さえるなどはもってのほか。
もちろん業績が悪化したからといって、基本的に高額な役員報酬を下げることはできません。

【注意点】

どうしても期中に役員報酬の減額をする場合は、特段申告は必要ないものの、減額決議した総会の議事録などは準備しておきましょう。

また、下げた役員報酬は基本的に損金算入できませんが、「業績悪化改定事由」に該当する場合は認められるケースもあります。

役員報酬を減額する際は、納める法人税が増える場合がありますので気をつけましょう。

まとめ

今回は家族への役員報酬についての考え方とメリット・デメリットを注意点に絡めながら説明しました。

家族へ役員報酬を適切に準備できるならば、なるべく早い検討がおすすめです。
その理由は以下のとおり、メリットの多さにあります。

①所得分散させて節税できる
②贈与税・相続税対策ができる
③老後の年金額が増える
④退職金を準備すると節税できる
⑤倒産リスクに対処できる
⑥高額な報酬を設定できる

家族を役員にすると多くの金銭的なメリットがありますので、家族への役員報酬を積極的に考えてみてはいかがでしょうか。



関連コラム:役員報酬の決め方


監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属


大学卒業後、一般企業を経て
 平成15年4月 シン中央会計 入社
 平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
 平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任

主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。


※本サイトに掲載の内容は、令和5年5月現在の法令に基づき作成しております。

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・会社登記はどうして必要なの?
・会社登記するメリット・デメリットは?
・会社登記の手続きや費用が知りたい

こんな悩みにお答えします。

結論、会社を作るには登記を避けては通れません。
個人事業主として所得が多くなると、会社設立を検討することもあるでしょう。

とはいえ、会社登記と聞くと手続きが大変そうですよね。

ですが、実はその壁を乗り越えた先には多くのメリットも存在します。
本記事では法人化を検討する際のポイントを解説しつつ、登記申請に関する
具体的手順をお伝えします。

今後を見据えて会社設立を考えているならば、ぜひ参考にしてください。

会社登記の必要性とは

会社として存在するためには登記が必要です。

会社登記(法人登記)とは、法人が取引するときに必要な情報を開示するために法務局に登録する制度です。

具体的には、会社として登記完了すると法務局より「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得できます。
これにより法人であることを外部に対して簡単に証明できるようになります。

では、どのようなときに証明する必要があるのでしょうか。

登記事項証明書の確認が求められるケース

主に次の2点で登記事項証明書が求められます。

①融資や増資などの資金を調達するとき
②許認可や補助金の申請をするとき

さすがに信用できない会社にお金は出せないものです。

・事業をきちんと行っているか
・会社としての実態に問題はないか
・申請基準を満たしているか

これらを確認し、信用できる会社かどうかを判断します。

ちなみに、法人成りすれば会社の代表者個人と法人とは別人格の扱いになります。
たとえば、銀行で融資を受ける場合は、個人名義ではなく法人名義で契約します。

会社登記のメリット・デメリット

初期費用と手間のハードルはあるものの、個人事業主にとって信頼性が上がり節税効果もある会社登記にはメリットがあります。

メリット・デメリットを順番に解説します。

会社登記するメリット(信用性の向上と節税)

・信用性が増す

 会社を登記すると登記事項証明書は誰でも取得でき、基本的な情報は一般公開されます。

 つまり、法人として取引上の信頼性を担保できますので、信用度は個人事業主よりも高くなります。

 前項で説明しました資金調達や補助金申請などで信用を獲得しやすくなります。

・節税できる

 個人事業主は所得税が最大45%ですが、法人税は最大約23%程度です。

 控除額を踏まえると単純比較はできませんが、例えば所得金額が900万円を超える場合、個人事業主の所得税率は33%(※1)以上かかりますが、法人だと一律23%(※2)程度です。

(※1.所得税の他、住民税10%もかかるため、実効税率は約43%です)
(※2.法人税以外の税金も含めた実効税率は会社規模にもよりますが、約33%前後です)

 他にも、法人の場合は役員給与を経費計上できるなど、税制面で優遇されます。

会社登記するデメリット(費用と手間)

・費用がかかる

会社登記するのに必要な各種手続きには何かとお金がかかります。

例えば、登録免許税や定款認証料など。

会社設立後は社会保険への加入義務もありますので、保険料の負担もお忘れなく。

・手間がかかる

慣れない登記申請手続きには手間がかかるでしょう。

ですので、司法書士に依頼する人が多いのも事実。

とはいえ法務局の担当者も親身に相談に乗ってくれますので、トライする価値はあります。

「商業登記」「法人登記」「会社登記」は定義が異なる

「商業登記」「法人登記」「会社登記」は定義や意味合いが異なりますが、同じ意味で使われるケースが多いです。

これらは商法や会社法に定められた会社等の一定事項を公示するための制度を指します。

では、似たようなワードの違いを押さえましょう。

会社登記・法人登記は商業登記の一部と考えて問題なし

商業登記=会社登記と考えて問題ありません。

というのも、設立した会社を登記するという意味で、商業登記ではなく会社登記と呼ばれることがあるからです。

そして、商業登記(会社登記)と法人登記の違いは営利目的かどうかです。

・商業登記(会社登記):営利目的の法人に必要な登記
・法人登記:非営利目的の法人に必要な登記

ですので、登記における対象は下記のとおり。

・商業登記(会社登記)の対象:株式会社、合同会社、合名会社、合資会社
・法人登記の対象:会社以外の一般社団法人、一般財団法人、NPO法人、社会福祉法人、宗教法人、学校法人

このように登記する対象が異なりますが、法人登記も会社登記も商業登記の一部として考えて差し支えありません。

商号登記との違い

商号登記との違いについても触れておきます。

商号登記とは、屋号を法務局に届け出することで一般公開できる制度です。

個人事業主が商号登記するメリット・デメリットは以下のとおり。

【メリット】
・登記簿謄本が作られるので、社会的な信用度を高められる
・公示されるので、他の会社と商号が重複するリスクを回避できる


【デメリット】
・商号登記申請書と印鑑証明書が必要となり手間がかかる
・登録免許税として30,000円が費用として必要


会社登記とは異なりますが、必要であれば申請を検討しましょう。

会社登記するまでの流れ【5STEPで解説】

複雑そうな会社登記ですが、主に次の5STEPで完結します。

【STEP1】会社概要を決める
【STEP2】印鑑を作成・認証する
【STEP3】定款を作成・認証する
【STEP4】資本金(出資金)を払込む
【STEP5】法務局で登記申請する


順番に解説します。

【STEP1】会社概要を決める

まずは必要事項を決めます。

【主に決めること】
・商号
・事業目的
・事業年度
・本店所在地
・法人の設立形態
・株式会社の設立方法
・役員
・資本金 など


なお、商号については類似調査をしておきましょう。
他者と同じ名称や類似の名称が使われていないか確認するためです。

ちなみに、法人の設立形態は発起設立と募集設立の2種類です。
発行株式の全部を発行人が引き受けるかどうかに違いがあります。
一般的には発起設立が多いですが、ご自身の会社設立にあった方法を選びましょう。

【STEP2】印鑑を作成・認証する

法人設立時に印鑑を実印で登録します。
印鑑は主に3種類。目的別に紹介します。

・代表者印(会社実印)
 会社登記時や契約締結時に使い、一般的には丸印で作られます

・銀行印
 銀行口座の開設時などに必要です

・角印(社印)
 請求書や領収書に押印するときに使います

【STEP3】定款を作成・認証する

【STEP1】で決めた内容に基づいて定款を作成します。

定款とは、会社の基本的なルールを示したもので、3つの記載事項があります。

・絶対的記載事項:必ず記載する必要ある
・相対的記載事項:一定の定めを設ける場合
・任意的記載事項:自主的に記載する

定款を作ったあとは、本社所在地を管轄する公証役場で認証を受けます。
過不足や法律違反がないかをチェックする必要があるからです。
ちなみに、合同会社の場合は認証不要です。

【STEP4】資本金を払込む

ここでの手順は2つです。

①預金口座へ資本金を払い込む

発起人の預金口座へ資本金を払い込みましょう。

大事なことは、振り込んだ形跡を残すこと。
払込証明書で必要になりますので、誰がいくら払い込んだのかがわかるようにしましょう。

②払込証明書の作成

払い込みを証する書面を作ります。

通帳履歴など入金履歴のわかる部分の写しを用意しましょう。
作成するときは各ページに割印をしておきましょう。

【STEP5】法務局で登記申請する

法務局での登記申請が完了すれば、晴れて法人設立です。
しかし、登記申請に必要な書類は多く複雑なので、さらに深掘りして解説します。

必要書類の準備

下記の必要書類をそろえましょう。

・設立登記申請書
書式は法務局のHPからダウンロードできます
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html

・定款

・資本金の払込証明書

・発起人の決定書(発起人議事録)
会社設立に必要な基本事項を書面にまとめたものを指します

【発起人が決定する項目例】
 ・商号
 ・会社の目的
 ・設立時の発行株式に関する情報
 ・設立時の役員に関する情報
 ・具体的な本店所在地


・就任承諾書
役員は会社から委任を受けて就任するので、それを承諾したことを立証する書面です

・印鑑証明書
定款の認証を受けたときと同じものを用意しましょう
なお、発行から3か月以内のものが必要です

・印鑑届書
法人の実印を登録するための必要書類です

記入漏れ、誤字・脱時、押印忘れなどには気をつけましょう。

登記申請書の作成・提出

本店所在地を管轄する法務局へ提出します。

【3つの申請方法】
・法務局への直接提出する
・オンラインで申請する
・郵送で申請する 


なお、登記申請を完了した日が法人設立日となります。

郵送での申請は到着までに時間がかかることをお忘れなく。
記念日などに設立日を合わしたい方は、逆算して提出しましょう。

登記完了

登記官からのチェックに問題がなければ、1〜2週間程度で完了します。
会社設立後の各種手続きで必要になりますので、「登記事項証明書(登記簿謄本)」や「印鑑登録証明書」を複数枚取得しておきましょう。

ちなみに、登記事項証明書と登記謄本の違いはコンピュータで処理されているかどうかですので、内容に差はありません。

会社登記にかかる費用

法人など会社自体は資本金1円から設立できますが、実際は定款の認証時などに諸費用がかかります。

【会社登記にかかる費用例】
・収入印紙代で40,000円
 ※電子定款を選ぶと不要

・定款の認証手数料30,000円
 ※資本金額によって変動します

・定款の謄本手数料約2,000円

・設立登記時の登録免許税として株式会社の場合は「資本金の額×0.7%」
 ※上記費用が150,000円未満の場合、最低でも15万円が必要

・印鑑証明書の取得費用

・登記事項証明書の取得費用

・司法書士などに依頼した際は報酬費用

法人を作るには20万円〜30万円は見積もっておくと良いでしょう。
合同会社を作る場合はその半分程度の費用を見積りましょう。

まとめ

今回は会社登記する必要性をはじめ、検討ポイントや登記申請の具体的手順を解説しました。

結論、会社登記には手間や費用がかかりますが、会社設立に登記は必須です。

また、個人事業主と異なり会社を設立すると、
・社会的な信用性が高まり
・資金の調達などがスムーズにでき
・節税対策にもつながる
といった事業展開するうえで大きなメリットも。

個人事業主やフリーランスとしての結果が大きくなるにつれて会社設立も検討してみてはいかがでしょうか。



関連コラム:法人設立時の届出
関連コラム:法人が納める税金の種類と節税のコツをくわしく解説


監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属


大学卒業後、一般企業を経て
 平成15年4月 シン中央会計 入社
 平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
 平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任

主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。


※本サイトに掲載の内容は、令和5年5月現在の法令に基づき作成しております。

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・法人が納める税金の種類は?
・きちんと納税する一方で節税対策もできる?


こんな悩みを解決します。


個人事業主と法人では納税する目的は同じでも呼び方が異なっていたりと、税金の種類の多さに苦戦する方も多いのではないでしょうか。


本記事を読むことで経営者として必須の税務知識を習得し、節税ポイントも押さえつつ、健全な会社経営の一助としてください。


記事前半では法人にまつわる税金の種類を、記事後半では法人の節税ポイントについて解説します。ぜひ参考にしてください。


法人が納める税金の種類とは?(支払うタイミングも押さえよう)

法人が納める税金は法人税だけではなく、地方法人税や消費税など他にも多くの種類がありますので、きちんと把握したうえで納税する必要があります。


また、法人の規模によって納める税金額が変わってくることも。


ここでは法人で主にかかる税金から順番に説明し、後半では場合によっては納付すべき税金についても触れていきます。


法人税

法人税とは、法人が得る所得に対して課せられる国税を指します。


・法人税の計算
 法人税は、法人の種類や資本金額、年間の所得金額で納税額が変動する仕組みです。



引用:国税庁『法人税の税率』https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm


・法人税の特徴
 個人事業主の所得税と比較すると最高税率が低く、高くても23.2%です。
 日本では超過累進課税制度が採用されていますので、個人事業主の場合は所得に応じて税率が5%~45%


控除額による変動はあるものの、事業所得が700万円以上になったタイミングで法人化を検討してみてもよいでしょう。


また、個人事業主に比べて法人の方が損金計上できる範囲が広いため、節税効果も期待できます。


・法人税の支払うタイミング
 原則として各事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内
 (例)会計年度が4月1日~3月31日までの場合、納付期限は5月31日


法人住民税

法人住民税とは、会社の本店・支店・事業所等がある都道府県や市町村に納める地方税を指します。
各地方自治体で税率が異なるため、地方自治体のHPを確認しておきましょう。


・法人住民税の計算
 道府県民税と市町村民税で構成されています。
 道府県民税と市町村民税はそれぞれ均等割と法人税割を合算して算出されます。



引用:総務省『法人住民税の概要』https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_04.html


・法人住民税の特徴
 均等割は資本金額や従業員数などを課税標準とし、法人所得が赤字の場合でも納税する必要があります。


・法人住民税の支払うタイミング
 原則として各事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内


法人事業税

法人事業税とは、事務所などがある自治体で事業を営むことに対する地方税です。
各地方自治体で税率が異なるため、地方自治体のHPを確認しておきましょう。


・法人事業税の計算
 計算方法は法人の資本金の大きさや事業種類によって異なります。


たとえば、資本金1億円超の法人は、所得金額以外の要素も考慮した外形標準課税が適用されます。
また、個人事業主と異なり、事業主控除額:290万円の適用はありません。


引用:総務省『法人事業税の概要』https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_04.html


・法人事業税の特徴
 法人の種類や資本金額で税率が変動しますので、法人所得が赤字の場合は納税する必要がありません。


・法人住民税の支払うタイミング
 原則として各事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内


特別法人事業税

特別法人事業税とは、法人事業税の一部を分離して導入された国税です。
2019年の税制改正により新設されました。


・特別法人事業税の計算
 「基準法人所得割額又は基準法人収入割額×税率」で計算されます。


引用:東京都主税局『特別法人事業税の税率表』https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/tokubetsu_houjin.html#gaiyo_02


・特別法人事業税の特徴と支払うタイミング
 法人事業税の一部ですので、法人事業税と併せて納付します。


地方法人税

地方法人税とは、地域間における税収の偏りの解消を目的とし、平成26年3月に公布された法人に対する税金です。


・地方法人税の計算
 「法人税額×税率」で計算されます。



引用:総務省『地方法人税(国税)』https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_07.html


・地方法人税の特徴
 地域による税収格差の縮小を目的とし、種類は国税に分類されます。


・地方法人税の支払うタイミング
 原則として各事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内


消費税

消費税はお馴染みの税金ですよね。

会社経営する場合は、消費者から預かった消費税を代わりに国に納める必要があります。
このように、負担者と納税者が異なるので消費税は間接税と呼ばれるわけですね。


・消費税の計算
「消費税=(売上高×消費税率)-(仕入高×消費税率)」で計算されます。


消費税率は以下の2つ。
 *標準税率:10%(国税分が7.8%、地方税分が2.2%)
 *軽減税率:8%(国税分が6.24%、地方税分が1.76%)
軽減税率の対象は、飲食料品(酒類や外食を除く)と週2回以上発行の定期購読される新聞です。


・消費税の特徴
消費税は基準期間をベースに計算されます。
基準期間とは納税義務の判定をする際に用いる期間を指し、個人も法人も前々事業年度が基準期間になります。


また、新規事業を開始した場合、最初の2年間は基準期間がないため免税事業者となります。
つまり、消費税の納付義務はありません。
(基準期間が無い年度でも、資本金額が1,000万円以上の場合は免税事業者となれません)


このように消費税は2年前の課税売上が1,000万円を超える場合にのみ、納税義務が発生します。
しかし、例外もあるので押さえておきましょう。



引用:国税庁『消費税のしくみ』https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_3.htm


上図のように、基準期間(令和3年)の課税売上高が1,000万円を超えていなくても、翌年(令和4年)の特定期間で1,000万円を越えると、課税期間(令和5年)では課税事業者として判定されます。
ちなみに、払い過ぎた消費税は調整後に還付されることもあります。


また、2期前の事業年度が1年未満の法人や前期の事業年度が7か月未満の場合などは別途判定が生じますので、詳しくは税理士までご相談ください。


なお、消費者から預かった税金であるため、たとえ会社の利益が赤字だとしても納税は必須です。


・消費税の支払うタイミング
 原則として各事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内

源泉所得税

源泉所得税とは、社員から徴収した所得税を会社が代わりに納税する税金です。


・源泉所得税の計算
 社員から徴収した所得税:(課税所得×税率)-税額控除額


・源泉所得税の特徴
 本来は所得を得た本人による納税が必要ですが、源泉徴収制度が適用されますので、一部の所得については給与を支払う会社など事業主側が源泉徴収して納めます。


・源泉所得税の支払うタイミング
 基本的には社員から徴収した日の翌月10日まで。


しかし、源泉所得税の納期の特例の承認を受けている場合は、年2回になります。
 *源泉徴収した所得税(1~6月)→7月10日
 *源泉徴収した所得税(7~12月)→1月20日


その他の税金(事業開始時や事業内容により変動あり)

それぞれ順にご紹介します。


固定資産税

固定資産税とは、事業の継続に使われる財産に課税される税金です。
主に、土地・建物・償却資産が対象となります。


支払うタイミングは4月~6月頃に納税通知書が届きますが、事業所のある自治体で異なりますので事前に確認しておきましょう。年4分割もしくは一括納付が可能です。


事業所税

事業所税とは、東京都23区や人口30万人以上の都市、政令指定都市などで一定規模以上の事業所を営む法人に課される税金を指します。


税金の計算と税率は下記のとおりです。
 ・資産割:事業所の合計床面積が1,000㎡を超える場合、1㎡につき年額600円が課税
 ・従業者割;従業員数が合計100名を超える場合、従業員の給与総額の0.25%


支払うタイミングは、原則として各事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。


印紙税

印紙税とは、印紙法で定められた文書を作成する際に課税される税金です。


たとえば、契約書や約束手形、領収書などが'代表例で、課税文書は20種類あります。
税額は契約内容や金額によって変わります。
5万円未満の領収書や契約書であれば「非課税文書」として扱われるので、税金はかかりません。


間違えても自主申告すれば過怠税は減税されますが、貼り忘れにはくれぐれもご注意を。


登録免許税

法人の設立・存続にはあらゆる種類の登記が必要です。その際に発生するのが登録免許税。


たとえば、
・株式会社:少なくとも15万円
・合同会社・合資会社・一般社団法人など:少なくとも6万円
が課税されます。


詳しくはこちらよりご確認ください。


不動産取得税

個人の場合と同様に、法人の不動産購入時にも税金がかかります。


・通常の不動産取得税=固定資産評価額×税率
・令和6年3月31日までに宅地を取得した不動産取得税=固定資産評価額1/2×税率


また、不動産購入時には登記が必要なので、登録免許税・印紙代なども必要です。


自動車税

自家用自動車をお持ちの方はイメージしやすいでしょう。
事業に必要な自動車にも、主に自動車税や自動車重量税がかかります。


法人にまつわる税金は節税対策も抜かりなく

脱税はダメですが、節税はOKです。


法人として納める税金の種類が多い一方で、節税できるポイントもいくつか存在します。
正しく納税して、きっちり節税対策もしておきましょう。


ただし、過度な節税や無理のある節税にはご注意を。


ここでは一般的に行われる代表的な節税方法をご紹介します。


損金として算入する

税務処理では損金が大きいほど所得が減りますので、納める法人税なども減税されます。
下記で紹介するポイントを押さえて、適正に節税しましょう。


役員報酬

金額が適正であれば損金算入できます。
ただし、定期同額給与など一定の条件を満たす必要があります。


注意点は、法人税を軽減できたとしても、役員個人の所得税が上がること。
バランスをとることが大切です。


保険・共済に加入する

保険料や掛金を損金計上できます。


保険会社では法人向けのプランがありますし、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)への加入もおすすめです。


福利厚生制度

一般的に、
・従業員等の全員へ支給される
・社内規定で一定の基準が明記されている
・社会通念上で妥当な金額の範囲
であれば損金算入が認められています。


(具体例)
・健康診断
・慰安旅行
・社宅制度 など


社用車

法人で所有する車両にかかる費用も損金算入できます。


(対象となる費用)
・車体取得費
・維持費
・燃料費
・自動車保険料


未払費用の計上

未払費用とは、今期中に発生した費用のうち、支払いが来期になるものを指します。


決算時に未払費用を今期の費用として損金計上すると、会社の所得を減らせますので節税につながります。


不要な在庫処分

処分してしまえば帳簿へ計上する必要はなく、節税につながります。


さらに処分にかかった費用は損金計上できます。
適切な在庫管理で節税につなげましょう。


青色申告を行う

法人は個人事業主とは異なり、青色申告特別控除(65万円)はありません。
しかし、青色申告を行うことでさまざまな特典が受けられます。


欠損金の繰越控除

赤字を翌事業年度以降に繰り越せる制度です。
法人であれば最大10年間(個人事業主は3年間)繰越可能。


たとえば、当年度が赤字だとしても翌年度以降に黒字になれば過去の赤字(欠損金)と相殺できるため法人税の節税につながります。


欠損金の繰戻還付

利益が生じて法人税を支払った翌期に赤字(欠損金)が出た場合、その欠損金を前期に繰戻して法人税を還付する仕組みです。
繰戻しできるのは前1年間のみ。資本金が1億円以下の中小企業のみ適用できます。


30万円未満の消耗品の購入費用を損金計上できる

従業員数が1,000人以下の中小企業に限定した制度です。
取得価額が30万円未満の減価償却資産を事業に使う目的で購入した場合、その取得価額の全額を損金算入できます。


仕組みをきちんと理解する

税金にまつわる仕組みを理解していると少しでもお得なケースにつながることも。


たとえば、消費税について。
資本金を多く設定しすぎると、消費税や法人税における免税などの特例を受けられなくなります。
資本金1,000万円を基準として消費税の納税義務の有無が変わるからですね。


法人にかかる税務や会計は専門家の手を借りるのも賢明な手段のひとつでしょう。
しっかり対策していきましょう。


まとめ

法人の税金は規模や事業内容で異なりますし、種類が多くて頭を抱える人も多いでしょう。


きちんと納税できない会社は社会的な信用を落とすだけでなく、金銭的に機会損失するケースもめずらしくありません。


たとえば、支払うタイミングや納税額を間違えると、追徴課税の恐れや税務調査の可能性も。
また、小規模の法人であれば税務に時間を取られ本来の仕事に支障をきたすこともあるでしょう。


だからこそ、きちんとした納税と適正な節税対策が肝心なのです。


時には専門家に相談したり、外部のサービスを思い切って活用するのもおすすめ。
経営手腕とともに納税手腕も高めていきましょう。




監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属


大学卒業後、一般企業を経て
 平成15年4月 シン中央会計 入社
 平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
 平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任

主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。

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