コラム

技能実習生の年末調整は必要?日本人労働者との違いは?
技能実習生にかかる税金はどう取り扱えばいいの?
技能実習生の年末調整の方法が知りたい

こんな悩みにお答えします。

技能実習生を受け入れるにあたり、不安になるのが税金の扱い方や年末調整。
状況にもよりますが、基本的には技能実習生も年末調整をする必要がありますので、適切に対応しなければなりません。

本記事でわかることは、
技能実習生の年末調整の必要性と日本人労働者と異なる点
技能実習生にかかる税金の基礎知識
技能実習生の年末調整の具体的な流れ(扶養控除がポイント)

扶養控除については、令和5年分から変更がありましたので記事後半でくわしく解説しています。

本記事を読み終えた頃にはきっと技能実習生の年末調整への不安は解消できるでしょう。
ぜひ参考にしてください。

技能実習生の年末調整は必要?【日本人労働者との違いを解説】

結論、技能実習生は「居住者」に該当すれば年末調整をする必要があります

まずは全体像を掴むためにも、
技能実習生の年末調整が必要な理由
技能実習生と日本労働者の年末調整で異なる点

について順に説明します。

技能実習生の年末調整が必要な理由

技能実習生を含む日本で働く外国人は、「居住者」「非居住者」に分けられます。

居住者とは国内に住所を有する者または1年以上居所を有する個人を指し、非居住者とはそれ以外の者を指します。

これらのうち、年末調整の対象になるのは居住者に該当する人ですので、技能実習生も居住者に該当すれば年末調整が必要です。

ただし、下記の条件に当てはまる人は除かれます。
1年間の主たる給与の総額が2,000万円を超える人
災害減免法により所得税・復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けた人

居住者か非居住者かの判断に迷う場合は、国税庁などに相談しましょう。

技能実習生と日本労働者の年末調整で異なる3点

主に異なるのは次の3点です。
扶養控除に必要な書類が多い
社会保険料などの控除ができない可能性
租税条約による特例の適用

扶養控除に必要な書類が多い

技能実習生は扶養控除に必要な書類が多くなります。

国外にいる親族を対象に扶養控除するには、扶養するために海外へ送金した事実などがわかる書類を揃える必要があるからです。

社会保険料などの控除ができない可能性がある

社会保険料などを控除するときは注意が必要です。

出身国の社会保険制度を利用している場合や、生命保険・地震保険などを外国企業と契約している場合は保険料控除ができないからです。

租税条約による特例の適用

一部の技能実習生は所得税などが免除されます。

技能実習生の出身国と日本の間で結ばれた租税条約を適用できるからです。

なお、免除を受けるときは雇用主を通して税務署あてに届出書を提出する必要があります

技能実習生にかかる税金の基礎知識

技能実習生も日本人と同じく、所得税・住民税の納税義務を負います。
それぞれの税金が課税される条件やタイミング、課税されないケースについてくわしく解説します。

所得税はすぐかかる

所得税は都度課税されますが、海外より来日した1年目と2年目で所得税の扱いは異なります。
「居住者」と「非居住」のどちらに該当するかで考え方が異なるからです。

【技能実習1年目】
日本に1年以上住んでいないので、非居住者に該当
所得に関係なく、一律20.42%の税率で源泉徴収する

【技能実習2年目以降】
日本人と同じ扱い
所得税は『給与所得の源泉徴収税額表』に基づいて源泉徴収し、12月の年末調整によって精算

このように所得が発生したタイミングで都度課税されるのが特徴です。

住民税は後払い

所得税と異なり住民税は後払いの税金ですので、課税のタイミングも異なります。

【技能実習1年目】
日本に1年以上住んでいないので、非居住者に該当
住民税の計算に必要な、日本における前年の所得がないので非課税

【技能実習2年目】
日本人と同じ扱い
前年の所得から計算された住民税を納める

このように前年の所得に応じて計算された税金を後払いするのが特徴です。

住民税に関する帰国時の注意点

技能実習生が帰国するときは、日本人の退職者と同じように12月を待たずに年末調整をします。

このときに注意が必要なのが住民税。
なぜなら住民税は後払いの税金なので、技能実習生の帰国後に納めないといけないからです。

具体的な対処法は下記のとおりです。

【住民税決定通知書が届いていない場合(退職月が1月〜5月)】
出国する前に役所へ納税管理人の届出を提出し、納税管理人を選ぶ
納税管理人は「税額試算依頼書」を提出して住民税額を聞き出す
納税するお金は事前に帰国する実習生から預かり、代わりに納付してもらう

【住民税決定通知書が届いている場合(退職月が6月〜12月)】
未納の残額を最終支給される給与から天引きする

納税管理人は納税額を下回らないために、技能実習生からお金を多めに預かります。
技能実習生には住民税が前年の収入に対する後払いの税金であることを丁寧に説明し、事後精算する時期や手段を事前に打ち合わせしておきましょう。

そもそも税金がかからない場合がある(租税条約)

技能実習生によっては、所得税や住民税が免除されることがあります。
租税条約を適用できるからです。

ただし、免除を受けるには事前に下記の手続きが必要です。

所得税を免除にする手続き

最初の給与支払の前日までに、源泉徴収義務者を通して納税地の税務署へ「租税条約に関する届出書」を提出します。

未提出だと租税条約で規定している限度税率は適用されず、国内法に規定する税率によって源泉徴収を行います。

最終的には「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を、源泉徴収義務者を通して納税地の税務署に提出し、租税条約によって軽減された税額と、国内法に基づいて納める税額との差額の還付を請求します。

住民税を免除にする手続き

下記の必要書類を役所へ提出すれば免除を受けられます。
税務署に提出した「租税条約に関する届出書」の写し
在留カードなど本人確認資料の写し
雇用契約書等の写し

なお、市町村によって求められる資料の種類に違いがありますので、事前にホームページなどで確認しておきましょう。

上記の手続きは毎年3月15日までにする必要がありますのでご注意ください。

技能実習生の年末調整の流れと必要書類【扶養控除がポイント】

技能実習生は国外に住む家族を扶養しているケースが多く、年末調整では扶養控除の手続きが少し煩雑になります。

特に扶養控除の要件や必要書類は、令和5年分から変更されていますので要チェックです。

・年末調整の流れ
・年末調整に必要な書類
・技能実習生の扶養控除


について順に説明します。

年末調整の流れ

年末調整の手続きの流れは技能実習生も日本人労働者も同じで、次のとおりです。

【STEP1】
「給与所得者の扶養控除等申告書」などの提出(技能実習生による申告)

【STEP2】
給与所得の源泉徴収税額表によって源泉徴収を行う(年末調整の計算)

【STEP3】
源泉徴収票や法定調書を作成し、納付すべき所得税の精算を行う(法定調書の作成・提出)

年末調整に必要な書類

主な必要書類は下記のとおりです。

給与所得者の保険料控除申告書と控除証明書
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

保険料控除では、技能実習生が締結する外国政府や外国企業との保険契約については控除できないのでご注意ください。

技能実習生の扶養控除(令和5年分から変更あり)

控除対象者の主な要件は、
6親等内の血族、3親等内の姻族、配偶者
納税者と生計を一にしていること

であり、「納税者と生計を一にしていること」とは必ずしも一緒に住んでいる必要はなく、技能実習生が親族に生活費相当額を海外送金していれば、この要件を満たします。

注意点は下図のように、令和5年分から適用要件が変更になった点で、以前と比べて扶養できる対象が狭まりました。


引用:国税庁『源泉所得税の改正のあらまし 令和4年4月』
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0022004-066.pdf

上記の改正に伴い必要書類が追加され、下表のように整理されています。

引用:国税庁『令和5年1月以後に非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ』
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0022009-107_01.pdf

配偶者控除に必要な書類はこれまでと同じく、親族関係書類と送金関係書類です。

以下では4つの書類について解説しますので、技能実習生には事前に説明し、抜け漏れなく手続きできるように案内しましょう。

・親族関係書類
・送金関係書類
・留学ビザ等書類
・38万円送金書類


なお、技能実習生は印鑑がなくても、サインによる署名が認められています。

親族関係書類

国外にいる親族が技能実習生の親族だと証明する書類です。

具体的には下記の書類の写しです。
・戸籍謄本
・出生証明書
・婚姻証明書
・国外居住親族の旅券(パスポート) など


なお、外国語で作成されている書類には翻訳文も必要ですのでご注意ください。

送金関係書類

技能実習生が日本から親族に送金したことを証明する書類です。

具体的には下記の書類の写しです。
・外国送金依頼書
・銀行の利用明細書
・通帳
・クレジットカードの利用証明書 など


クレジットカードは国外にいる扶養親族が、そのカードを使って買い物をした事実を証明する必要があります。

また、配偶者や子どもに送金した場合、それぞれに対して送金者と受領者の氏名、送金日、送金額がわかるようにする必要があり、一時的に帰国してお金を手渡しした場合などは証明書がないと扶養控除を受けられませんのでご注意ください。

留学ビザ等書類

外国政府または外国の地方公共団体が発行した、次のいずれかの書類の写しです。

・外国における査証(ビザ)に類する書類
・在留カードに相当する書類

 

38万円送金書類

国外にいる扶養親族へ年末調整の対象となる年において、支払金額の合計が38万円以上であることを証明する書類です。

生活費や教育費などに充てるために送金したすべての書類を提示または提出する必要があります。

一定の条件を満たせば書類の提出または提示を省略できますが、関係書類は手元で保管するよう技能実習生に案内しましょう。

まとめ

本記事では技能実習生の年末調整の必要性や日本人労働者と異なる点、具体的な手順について解説しました。

内容をまとめると、
居住者に該当すれば技能実習生も年末調整が必要
所得税と住民税は課税のタイミングが異なるので技能実習生に丁寧な説明が必要
租税条約により免税されるケースでは事前の手続きが必要
扶養控除では国外にいる親族の扶養を証する書類が必要で、令和5年分から対象者が狭まった

技能実習生は年末調整についてくわしくありません。
企業側で内容をしっかり理解したうえで、必要な書類を案内し、適切に納税と所得控除ができるように導くことが求められます。

国外の親族を扶養する証明書類などは取得に時間や手間がかかりますので、本記事を参考に前もって案内し、技能実習生が安心して年末調整ができる体制を整えていきましょう。


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監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属大学卒業後、一般企業を経て
平成15年4月 シン中央会計 入社
平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。

※本サイトに掲載の内容は、令和5年9月現在の法令に基づき作成しております。

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技能実習生の給与はどうやって決めればいいの?
給与を決めるときの注意点が知りたい
技能実習生と給与面でギクシャクしたくない

こんな悩みにお答えします。

結論、外国人である技能実習生も日本人と同様に、給与は適切かつ公平に支払うことが求められます。

不当な差や不平等な扱いは法的に罰則の対象となり、たとえば最低賃金法の違反では50万円以下の罰金、労働基準法違反では30万円以下の罰金などに処されます。

技能実習生を受け入れる企業としての社会的信用も落としかねないでしょう。

本記事では、
技能実習生の給与計算で必要な5つの視点
技能実習生の給与計算で気をつけたい3つの注意点
技能実習生と給与面でのトラブルを避けるコツ

をお伝えしますので、これから技能実習生を採用するときに必要な基本的となる考え方を身につけられます。

ぜひ最後までご覧ください。

技能実習生の給与計算で必要な5つの視点

技能実習生の給与計算に必要な5つの視点は次のとおりです。

最低賃金を決して下回らない
割増賃金はきちんと支払う
年次有給休暇をきちんと付与する
5つの条件を満たして給与を支払う
技能実習生にも労働関係法令を適用する

大前提ですが、同じ仕事をしている人には同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」の原則に基づいて、不合理な待遇差は解消しましょう。

下記は技能実習生と同じ年齢層にあたる日本人労働者との給与水準の比較です。

引用:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/

現状としては、技能実習生の給与は日本人の高卒者よりも低く、おおよそ同年代にあたる25歳〜29歳の層と比べると大きな乖離があります。

厚生労働省が公表するデータによると、
労働基準関係法令違反が認められた企業は73.7%にあたる7,247件
もっとも多い違反が『作業の安全配慮の欠如』で2,326件の23.7%
次いで残業代などの割増賃金に未払いが1,666件で16.9%
重大・悪質な法令違反により送検したのは21件

など、統計を取り始めた平成15年以降ではワースト記録を更新しています。

厚生労働省は「度重なる指導にもかかわらず法令違反を是正しないなど重大・悪質な事案に対しては、送検を行うなど厳正に対応する」とコメントしており、企業にとって適切な給与計算が求められるのは言うまでもありません。

では、適切に給与計算をするための5つの視点について順に解説します。

最低賃金を決して下回らない

次の2種類の最低賃金を比べ、金額が大きい方を下回ってはいけません。

・地域別の最低賃金
・特定最低賃金


労働者やその家族が最低限の生活ができる金額として、最低賃金法で定められているからです。

地域別の最低賃金とは、都道府県別に決められる最低賃金額で、毎年10月に改定されます。年々、上昇傾向にありますので時間の経過とともに最低賃金を下回っていないかに注意しましょう。
くわしくはこちらをご覧ください。

特定最低賃金とは、都道府県別に業種によって決められる最低賃金です。
くわしくはこちらをご覧ください。

最低賃金は決して下回らないようにしましょう。

割増賃金はきちんと支払う

労働基準法では1日8時間週に40時間を超えた労働は許されませんが、労使間で36協定が結ばれていれば超過した労働も認められます。

36協定では、月45時間(超過は年6回まで)・年360時間を超えてはならず、臨時的な特別の事情があり労使が合意する場合でも年720時間・複数月平均80時間(休日労働含む)・月100時間(休日労働含む)を超えてはならない罰則付きの上限が定められています。

超過した場合、下表の率に応じて適切に割増賃金を支払いましょう。

※2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられ、中小企業も大企業と同じように50%が適用される
※出入国管理および入管法により、技能実習生の内職は認められない

なお、賞与(ボーナス)の支給は企業で判断します。

法による取り決めはなく企業が自由に決められますが、技能実習生のモチベーションや信用の低下につながりますので、日本人労働者と変わりなく公平に支給しましょう。

年次有給休暇をきちんと付与する

技能実習生として雇入れた日から起算して6か月間の継続勤務
全労働日の8割以上の出勤
を満たす技能実習生には有給休暇をきちんと付与しましょう。

労働基準法で定められていますので、企業の都合で変更してはいけません。

具体的には、週5日以上の勤務または所定労働時間が週30時間以上であれば下表のとおりで、条件を満たさない労働者は週所定労働日数に応じて有給休暇を比例付与します。

もちろん有給取得した技能実習生に対して、給料の減額や不利益を被るような取り扱いは許されません。

5つの条件を満たして給与を支払う

次の5つの条件を満たしましょう。

・毎月1回上支払う
・一定の期日を決めて支払う
・通貨で支払う(同意があれば口座振込も可能)
・直接支払う
・給与の全額を支払う


基本的には日本人と同じようにすれば問題は起きません。

とはいえ、外国人にとって『給与控除』という概念は馴染みが薄いので注意しましょう。

税金、保険料、寮費など労使協定で決めているものは給与から天引きできますが、トラブルを防止するためにも、技能実習生には事前に説明し、理解してもらうことが大切です。

技能実習生にも保険・年金・労働関係法令を適用する

技能実習生にも、保険・年金・労働関係法令を適用し、日本人労働者と同じ待遇にしましょう。

決して不当な差を設けてはいけません。

たとえば次のようなものです。

・雇用保険
・労災保険
・国民健康保険もしくは健康保険
・厚生年金・国民年金
・労働安全衛生法(1年以内に1回、一般健康診断を実施) など


日本人と異なる点として、年金制度における脱退一時金の仕組みを押さえておきましょう。
脱退一時金は技能実習生が日本の公的年金制度から抜けるときに受け取れますが、次の条件を満たす必要があります。

・帰国から2年以内に請求
・加入期間が6ヶ月以上
・障害年金を受け取っていない


また、老齢年金も受け取れますが、脱退一時金を受け取っていると受給資格がなくなりますので、脱退一時金の受け取りは慎重に判断してもらいましょう。

技能実習生の給与計算で気をつけたい3つの注意点

技能実習生の給与計算では、次の3点に気をつけましょう。

・労働時間を適切に管理する
・不透明な管理費で控除しない
・最低賃金だと技能実習生が集まらない可能性がある

労働時間を適切に管理する

必ず始業時間と終業時間を管理しましょう。

労働基準法では労働時間の管理について厳格に運用されているからです。

主な労働時間の管理は
・直接確認する方法
・タイムカードなどで記録する方法


ですが、システム管理ができないなどの理由で採用する自己申告制には注意が必要です。

労働時間の考え方やルールを事前に技能実習生に伝え、乖離が生じない工夫が求められます。企業側の圧力で事実を歪めたり、虚偽の申告を招かないように配慮して、給与の不払いを避けましょう。

不透明な管理費で控除しない

技能実習生が日本の給与体系に不慣れな点につけ込んで、適当な名目で給与から費用を天引きしてはいけません。

実際に悪質なケースとして厚生労働省も警鐘を鳴らしています。

たとえば、次のような費用です。
・監理団体への費用(入会金、年会費)
・渡航費用
・書類作成費用
・申請費用
・保険料
・講習費用
・講習手当

それぞれ数万円〜15万円程度が必要になりますが、これらはもともと技能実習生を受け入れる企業側が負担する費用です。

不透明な「管理費」などの項目で誤魔化し、技能実習生の給与から不当に控除してはいけません。

最低賃金だと技能実習生が集まらない可能性がある

最低賃金だと技能実習生が集まらないことを念頭におきましょう。
なぜなら、技能実習生の出身国、職種、資格・スキル次第では、給与水準を上げないと人が集まらないからです。

たとえば最低賃金で比べると、東京都は1,072円である一方で群馬県は895円です。

ひと月30日で週休2日の場合、仮に3年間働けば
・東京都:1,072円×8時間×月22日×12ヶ月×3年=6,792,192円
・群馬県:895円×8時間×月22日×12ヶ月×3年=5,670,720円
→6,792,192円−5,670,720円=1,121,472円

約112万円の所得差につながり、最低賃金の差は大きいといえます。同時に求人が出ていた場合、東京都を選ぶ技能実習生は多くなるわけです。

他にも、たとえば中国のように給与水準が上昇傾向にある国の技能実習生にとっても同じことが言えますので、集める人材に応じた賃金設定を考えましょう。

技能実習生と給与面でのトラブルを避けるコツ

技能実習生への深い理解が良好な関係をつくり、給与や待遇面でのトラブルの回避にもつながります。

国が違えば文化や言語が異なるのと同じく、給与に対する考え方や税金などのルールに対する理解ももちろん異なるからです。

技能実習生への給与でつまずかないためのポイントを順にお伝えします。

租税条約について理解を深める

日本と租税条約を結んでいる国の技能実習生は所得税・住民税が免除されることがあります。

たとえば、中国人の給与は税引きされない一方で、ベトナム人の給与は税引きされるなど。

「同じ仕事をしているのに、どうして自分は給料が低いの?」と技能実習生同士でのトラブルになり関係が悪化し、働くモチベーションが低下するケースもあります。

企業と技能実習生、そして技能実習生同士の理解を深める配慮をし、きちんと説明して事前に対策しておきましょう。

技能実習生について理解を深める

実際に多くの技能実習生は学び、働きながら母国へ仕送りをしています。

母国にいる家族の少しでも豊かな生活と、将来の貴重な蓄財する機会として日本で働くことを選んでいるのです。

少しでも技能実習生に寄り添い、「外国人は安い給料で雇える」という誤った考え方は捨てましょう。

まとめ

今回は技能実習生の給与計算にまつわるポイントや注意点について解説しました。

本記事をまとめると、
「同一労働同一賃金」を守り、最低賃金を上回る給与を計算しよう
労働時間を適切に管理して年次有給休暇をきちんと与えよう
割増賃金は必ず支給し、ルールに沿った適切な給与支払いしよう
各種法令などは日本人と同じく適用されるので、不当な扱いは決して許されない
最低賃金だと技能実習生が集まらない可能性がある

自治体によっては外国人雇用を応援する目的で、補助金や助成金の制度がありますのでうまく活用しましょう。

「外国人労働者を安い給与で雇える制度」という考えは時代遅れ。

厚生労働省も目を光らせている重要な課題でもありますので、技能実習生の給与計算は適切に行いましょう。


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監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属大学卒業後、一般企業を経て
平成15年4月 シン中央会計 入社
平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。

※本サイトに掲載の内容は、令和5年9月現在の法令に基づき作成しております。

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非居住者の源泉徴収や年末調整について知りたい
海外勤務者の給与計算で気をつけるべきポイントは?

こんな悩みにお答えします。

そもそも給与支払にかかる経理処理や税金の仕組みを理解するだけでも大変なのに、海外勤務者の
給与計算となれば頭がパンクしそうになるのも無理はないでしょう。

かといって放置するわけにもいかず、頭を悩ます経理担当者も多いのではないでしょうか。

結論、しっかり全体像を押さえておけば、イレギュラーな処理にも対応できます。

本記事を読むメリットは次のとおりです。
非居住者の源泉徴収と年末調整の全体像がわかる
海外勤務者の給与支払に必要な知識が身につく

最後までご覧いただけば、きっと非居住者に対する給与支払もスムーズにできるでしょう。
ぜひ参考にしてください。

非居住者への給与支払でお悩みのあなたへ!源泉徴収と年末調整の全貌

結論、日本に住所のない海外勤務者のような非居住者の所得は、

日本国内で稼いで得た「国内源泉所得」のみが課税対象になり
一律20.42%が源泉徴収され
年末調整の対象にはならない

と決められており、非居住者に該当する外国人労働者に対しても考え方は同じです。

居住者と非居住者の違いは下表のとおりで、それぞれで課税される所得の範囲が異なります。


国内源泉所得と国外源泉所得の違いは、「どこで働いて得た収入か」であり、次のとおりです。

【国内源泉所得とは】
 日本国内で働いて得た所得を指し、非居住者であっても国内源泉所得がある場合は、所得税として
一律20.42%を源泉徴収する

【国外源泉所得とは】
日本国外で働いて得た所得を指し、海外赴任者などの非居住者が、海外で勤務して支払われた給与は「国外源泉所得」に該当するので日本での所得税は非課税

居住者の所得は「全世界所得課税」の考え方に基づき、世界中のどこで働いても所得税が課税されます。

一方で、非居住者の所得は国内源泉所得のみ課税対象になり、支払い元が日本の会社だとしても、国外での所得は国外源泉所得になりますので日本の所得税は非課税です。この場合、勤務する国ごとの所得税がかかります

では次に、居住者・非居住者に該当するかを、形式的に判断してはいけない理由を解説します。

居住者・非居住者の判定は推定規定に基づく

居住者・非居住者の定義における「住所」や「居所」は、実務では推定規定によって判断されます。

つまり、形式的ではなく客観的事実に基づく必要があります

たとえば、住所地は日本にあっても、1年以上の海外転勤がわかる資料などがあれば、客観的な事実に基づき非居住者として判断されるわけですね。

住所と居所の考え方は以下のとおりです。

【住所】
生活関係の中心となっている場所

【居所】
生活の本拠ではないが、多かれ少なかれ一定の期間を継続して居住する場所

定義ではなく、「実際はどうなのか?」という視点で判断されるのです。

非居住者が年末調整の対象にならない理由

冒頭でもお伝えしたように、非居住者は年末調整の対象になりません。

年末調整の対象になるのは、居住者だからです。

具体的には、海外勤務する期間が1年以上だと非居住者に該当しますので、その者が得る国内源泉所得には一律20.42%で源泉徴収します。そして、源泉徴収した翌月10日までに国に納付し、課税関係は終了します。

このように非居住者は年末調整や確定申告をする必要はありません

一方で、居住者は「給与所得の源泉徴収税額表」により源泉所得税を徴収し、年末調整により先に支払った所得税を精算します。

非居住者が課税される国内源泉所得は15種類

非居住者に対する課税関係の概要は次のとおりです。

※土地(3)・不動産(5)による所得は源泉徴収が不要な場合もある
参照:国税庁『国内源泉所得の範囲(平成29年分以降)』
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2878.htm/

課税方法は次の3つの要件によって異なります。
国内源泉所得の種類
恒久的施設の有無
国内源泉所得が恒久的施設に帰せられるか否か

「恒久的施設なければ課税なし」という国際的なルールのもと、非居住者が日本国内で給与の支払いを受けても、日本国内に恒久的施設がなければ課税されることはありません。
このように恒久的施設(PE)とは、非居住者の課税関係を決めるうえで大きな指標です。

なお、租税条約によって国内源泉所得について異なる定めがある場合は、国内法より租税条約を優先しなければなりません。

租税条約を優先する

国内法よりも租税条約を優先しましょう。

租税条約は二重課税の排除租税回避の防止を目的として、日本と相手国とで結ぶ条約です。
これにより所得税や住民税が減免もしくは免除されます。

日本は下図のように多くの国と結んでいます。


出典:財務省『租税条約に関する資料(我が国の租税条約ネットワーク)』
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/index.htm#a02/

租税条約ではどちらの国の「居住者」に該当するかを、下記の順で判定します。

①恒久的住所
②利害関係の中心的場所
③常用の住居
④国籍


ただし、租税条約を適用するには事前に届出が必要です。
給与日の前日までに「租税条約に関する届出書」などを税務署へ提出しましょう。

非居住者となる海外勤務者と役員への給与支払【違いを解説】

1年以上を外国で勤務する海外勤務者や役員への給与支払の違いについて、次の順番で解説します。

・海外勤務者(従業員)の源泉徴収
・海外勤務者(役員)の源泉徴収
・海外勤務者の年末調整


役員については考え方が異なりますので、しっかり確認しておきましょう。

海外勤務者(従業員)の源泉徴収

源泉徴収の必要性は、国内源泉所得なのか国外源泉所得なのかによって異なります。

【海外勤務期間が1年未満】
居住者に該当し、国内勤務に基づく給与は国内・国外問わず源泉徴収が必要(全世界所得課税)

【海外勤務期間が1年以上】
非居住者に該当し、国外勤務に基づく給与は国外源泉所得になるため、源泉徴収は不要

ただし、1年以上海外にいる者が日本で1ヶ月働いた場合などは、国内勤務による所得は源泉徴収しますが、働いた期間が1ヶ月以内であれば国内源泉所得に該当しないため源泉徴収は不要です。

海外勤務者(役員)の源泉徴収

従業員と大きく異なるポイントは、役員は1年以上の海外勤務だとしても、内国法人の役員として支払いを受ける報酬は、国内源泉所得とみなされるため20.42%の源泉徴収が必要な点です。

なぜなら、役員は委任を受けた存在でありどこでも仕事ができると解釈されるから。

現地の国で課税された場合は、外国税額控除などの二重課税排除の手続きができます

ただし、役員が海外支店の支店長など、使用人として常時海外で勤務している場合の所得は国外源泉所得に該当するため源泉徴収は不要です。

海外勤務者の年末調整

居住期間が1年を超えるかどうかが、年末調整の対象になるかならないかの判断基準です。

以下を参考に判断しましょう。

【国内居住が期間1年以上】
居住者に該当するため、年末調整が必要

【国内居住期間が 1年未満】
非居住者に該当するため、年末調整は不要

【年の途中で海外勤務を開始】
1年以上の海外勤務の場合、出国までに確定した収入は年の途中で年末調整します

【年の途中で海外より帰国】
帰国して1年未満の場合、帰国日から年末までを年末調整します

次項では、「年の途中に海外勤務することになった従業員」の年末調整について深掘りします。

出国時までに年末調整をする

出国までの居住者として支払われた給与について、事前に源泉徴収された所得税を精算しましょう。

なお、以下のケースでは出国時の年末調整は不要です。
・1年以内の海外勤務
・その年の給与が2,000万円以上


年金保険や健康保険、介護保険、雇用保険、労災保険などは社会保険料控除の対象になりますし、扶養控除や配偶者控除も受けられますので、「給与所得者の保険料控除申告書」などの提出を従業員に案内しましょう。

納税管理人を選任する

出国までの年末調整と併せて、納税管理人の選定もお忘れなく。

海外勤務になれば通常納めるべき税金を納められないので、代わりに納税してくれる人を選ぶ必要があるからです。

具体的には、出国日までに納税管理人を決めて、翌年2月16日から3月15日までに非居住者である従業員に代わって確定申告をしてもらいます。

海外勤務が決まった段階で、計画的に進めましょう。

まとめ

今回は非居住者の給与支払、特にこれから海外勤務をする従業員への給与支払について解説しました。

本記事をまとめると、
非居住者に該当すれば国内源泉所得のみ一律20.42%で源泉徴収され、年末調整は不要
居住者に該当する以上は、全世界所得課税なので国外源泉所得の一部も課税される
租税条約を適用すれば二重課税などを避けられるが、必ず事前の手続きが必要
同じ海外勤務であっても、従業員なのか役員なのかで考え方は異なる
海外勤務が決まった従業員は出国までに年末調整を済ませ、納税管理人を選んで翌年の納税準備を進める必要がある

給与支払の対象者が居住者なのか非居住者なのかの判断を誤ると、金額の徴収ミスや納税トラブルに発展しかねません。

不安があれば税理士や税務署などへの相談も視野に入れましょう。

本記事を参考に、適切な経理処理を行いましょう。



関連コラム:従業員と外注の違いを解説【税務調査で否認されないために】
関連コラム:法人が納める税金の種類と節税のコツをくわしく解説


監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属大学卒業後、一般企業を経て
平成15年4月 シン中央会計 入社
平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。

※本サイトに掲載の内容は、令和5年8月現在の法令に基づき作成しております。

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法人向けの保険は種類が多すぎる!どれに加入すればいいかわからない
節税する方法や、加入する際の注意点は?

こんな悩みにお答えします。

法人向けの保険を検討するも、会社の事業に手いっぱいで保険にまで考えが至らない経営者も多いのではないでしょうか。

経営をする上で、万が一が起きた際の備えは大切です。

とはいえ、営業されるがままに保険に加入するのは要注意です。

結論、法改正により法人保険は以前ほど節税しにくくなったからこそ、保険の種類や特徴を把握して会社の目的に合った保険を選びましょう。

本記事では、
法人向けの代表的な7つの生命保険
法人向け保険の賢い使い方と保障額の決め方
損金算入のルール変更による節税しにくくなった理由
損害保険を構成する4つの視点

これらを解説しますので、本記事を読めば保険選びの選球眼が身につきます。
ぜひ最後までご覧ください。

法人向けの生命保険の種類【大きく分けて7種類】

生命保険は『ヒト』の生死にまつわるリスクに備える保険です。

必要なお金が大きくなるほど、不測の事態が起きたときに資金がショートしたり、倒産に追い込まれるケースも珍しくありません。

以下では代表的な法人向け保険を7つご紹介します

①逓増定期保険(ていぞうていきほけん)

保険期間の経過にともなって保証額(保険金)が徐々に増えるのが特徴で、被保険者の死亡や高度障害に応じて保険金が支払われます。

一般的に保険期間は前期と後期があり、前期は加入時に決めた保障額のままで、後期は保険会社が定める一定の割合で保障額が増えます。

【メリット】
徐々に保障が大きくなるので、会社の成長に合わせた保障設計ができる
解約返戻金のピークが早いので、近い将来の役員退職金の財源や会社経営のリスクに備えられる

【注意点】
保険料が高い
加入後すぐに解約すると大きく損をする

生命保険に加入するには告知や審査が必要です。会社が成長してさらに大きな保障が必要になっても、その時の健康状態によっては加入できないことも。逓増定期保険は徐々に保障額が増えていくので、そのような将来的なリスクに備えられる側面もあります。

②長期平準定期保険

保障額や保険料は期間満了まで一定なのが特徴です。

逓増定期保険と同じく経営者の万一には、被保険者の死亡や高度障害に応じた保険金が支払われます。

保険会社によっては、
低解約返戻金型
健康状態で保険料の割引
外貨建てのタイプ

など、さまざまな種類が取り扱われています。

【メリット】
まとまった金額を経営者の万一に備えられるので、借入金の返済や残された家族の生活資金、相続税などの納税資金として備えられる
死亡退職金や弔慰金として活用できる
保険料が一定なので資金計画を立てやすい

【注意点】
解約返戻金のピークを迎えるまでに10〜30年かかるので、早期に解約すると大きく損をする
保険期間が満了すると解約返戻金・満期保険金がない


長期平準定期保険は以前ほど節税効果は得られなくなりましたので、
役員への退職金に充てる
会社の赤字による欠損繰越金と相殺させる

など、出口戦略を考えつつ戦略的に加入しましょう。

③養老保険

被保険者の死亡や高度障害に応じて保険金が支払われ、保険期間が満了したときに生存していれば満期保険金が支払われるなど、貯蓄性の高さが特徴です。

【メリット】
死亡退職金や弔慰金、通常の退職金を支払う原資としても活用できる
一定の条件を満たして福利厚生として加入すれば、保険料の半分を損金算入できる

【注意点】
福利厚生で使う場合、社員全員を加入対象とする必要があり、保険料が高くなりがち

福利厚生に活かす場合は必ず福利厚生規定を設け、税務調査に備えましょう。

また、保険料を支払う際には損金算入できたとしても、満期保険金を受け取る際には課税されますのでご注意ください

④がん保険

法人向けの商品では事業保障を重視していますので、個人向けのがん保険より保障内容が充実しているのが特徴です。

個人向けでは掛け捨てが多い一方で、法人向けでは解約返戻金終身型のタイプもあります。
ただし、保険料は高くなります。

【メリット】
解約返戻金のない終身型のがん保険は退職金代わりに一生涯のがん保障をプレゼントできる
解約返戻金のあるがん保険は役員退職金に使える

【注意点】
解約返戻金ありのタイプや終身型の場合は、保険料が高くなる

退職金代わりに一生涯のがん保障をプレゼントできる理由は、解約返戻金がないタイプだと資産価値がないもとして扱われますので、退職者に契約者を変更しても経済的な負担が発生しないからです。(※保険内容によっては課税の可能性も御座いますので、具体的には税理士へご確認ください)

⑤医療保険

個人向けの商品と内容は変わりなく、病気やケガでの入院・通院にかかる費用を保障します。

【メリット】【注意点】はがん保険と同様で、節税しながら従業員の福利厚生の準備ができます。

また、解約返戻金のあるタイプの商品は役員退職金として活用すれば、現金支給を減らすことができ、会社に資金を残せるメリットがあります。

⑥生活障害保障定期保険

死亡や高度障害だけではなく、生活に障害をきたす場合にも保険金が支払われますので、ケガや病気で働けなくなった時への備えられます。

【メリット】
要介護状態・認知症・三大疾病(がん・脳卒中・心筋梗塞)など、幅広くリスクに備えられる

【注意点】
リスクをカバーする範囲が広い分、保険料が高くなりがち

⑦収入保障保険

死亡や高度障害になったときに保険金を一時金もしくは年金形式で受け取れます。

保険会社によっては就労不能になったときにも保障を受けられる商品もあります。

【メリット】
年金形式で保険金を受け取れるので、経営者に万一のことがあっても月々の返済などに充てるなど、借入金対策として活用できる

【注意点】
加入当初の保障額が大きく、保険期間の経過とともに保障額が減少する
保険料が安い一方で、解約返戻金・満期保険金はないのが一般的

法人向け保険は以前ほど節税できない

2019年(令和元年)6月の法改正にて、保険料の損金算入についてのルールが変更され、以前ほど損金算入できなくなりました。

そもそも法人保険の節税効果は一時的なものであり、実は課税の先送りをしているに過ぎません。だからこそ常に出口戦略まで考える必要があるのです。

たとえ保険料の全額を損金算入できても、解約返戻金は益金となり課税対象になります。

節税はあくまで二の次。保障を重視したり、会社の目的と照らし合わせたりして加入しましょう。

では、変更後のルールについて解説します

解約返戻率に応じて資産計上する必要がある

解約返戻金が多いなど、資産として価値がある保険は資産計上する必要があります。

【対象となる保険】
定期保険(逓増定期保険、長期平準定期保険 など)
第三保険分野(医療保険、がん保険 など)

【変更後のルール】
最高解約返戻率50%以下
 →全額損金算入

最高解約返戻率50%超~70%以下
 →60%が損金算入

最高解約返戻率70%超~85%以下
 →40%が損金算入

最高解約返戻率85%超
 →当初10年間:支払保険料×最高解約返礼率×0.9
 →11年目以降:支払保険料×最高解約返礼率×0.7

 (具体例)
  ・最高解約返戻率86%の損金割合は、当初10年間は22.6%、11年目以降は40%
  ・最高解約返戻率95%の損金割合は、当初10年間は14.5%、11年目以降は34%
  ・最高解約返戻率100%の損金割合は、当初10年間は10%、11年目以降は30%
  

上記のように損金算入できない保険料はすべて資産へ計上します。
そして加入から一定期間経過後に、残りの保険期間で均等に分けて損金計上しながら取り崩していきます。

ただし、被保険者ごとの保険料が30万円以下の場合、下記の条件を満たせば保険料を全額損金にできます。
①最高解約返戻率が70%以下の法人向け定期保険
②終身型の第三分野保険のうち、保険料が短期払込のもの

①と②のそれぞれで30万円以下なら、1人あたり合計60万円まで保険料を全額損金にできる枠があるのと同じですので、必要に応じて有効活用しましょう。

参考:国税庁HP『第3節 保険料等』
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm/

法人向けの生命保険は課税後の受取金額を逆算すべし

課税された後に受け取れる保障額を逆算して保険に入りましょう。

法人税が約33%とすれば、受け取る保険金の約67%が手元に残る計算になるからです。

たとえば、会社に1億円の借入金があり経営者が死亡した場合、小さい会社ほど借金の返済義務は家族に及び、残された家族が自己破産するケースも。

1億円の返済義務が残るなら、33%課税されても手元には1億円が残るように1.5億円の保障に入りましょう。

大切なのは逆算して保障額を決めることです。

法人向けの損害保険の種類【4つの視点でもしもに備える】

損害保険とは『モノ』の所有にまつわるリスクに備える保険です。

法人向けの保険には会社の活動にともなって発生するリスクへ対応する商品が数多くあります。

下記の4つの視点を参考に、会社の事業内容や抱えるリスクを十分に予測・把握して加入しましょう。

①損害賠償に対応する保険

相手方への賠償責任リスクをカバーする保険です。

事業内容によって商品は多岐に渡りますので、一例を列挙します。

・自動車保険
・PL保険
・施設賠償責任保険
・役員賠償責任保険
・請負業者賠償責任保険
・生産物賠償責任保険
・使用者賠償責任保険
・テレワーク保険
・サイバー保険
・セキュリティ保険
・IT賠償責任保険
・個人情報漏洩保険
・建設業総合保険

たとえば身近な自動車保険のように、事故により死傷させた相手への損害賠償義務に備えることができます。

業種や業態を踏まえ、必要に応じて賠償責任リスクに備えましょう。

②企業財産に対応する保険

会社が保有する建物や設備などの資産を守るための保険です。

下記のような商品があります。
・火災保険
・工事保険
・機械保険
・企業財産包括保険
・動産総合保険


失った資産を回復させるのは多額の資金が必要になりますので、しっかりリスクに対処しましょう。

③事業運営に対応する保険

事業をしているとさまざまなリスクにさらされます。

そんな時に頼りになるのが下記のような保険です。
・取引信用保険
・船舶・貨物・運送の保険


上記は一例ですが、取引信用保険は取引先の倒産に伴う自社の貸し倒れリスクに備えられ、船舶の保険では座礁・火災・衝突など船を使う仕事ならではの多様なリスクに備えられます。

事業内容に適したリスク対策を行いましょう。

④従業員が抱えるリスク対応する保険

『政府労災保険』への上乗せ保障など、リスクに備えつつ従業員への待遇を充実できます。

たとえば下記のような保険です。
・労働災害総合保険
・業務災害総合保険


従業員に対する使用者が被る賠償責任のリスクをしっかりカバーしつつ、従業員にとっても安心して働ける環境づくりができます。

事業活動全般に対応する保険もある

「細かすぎて分けられない」
「多過ぎてどれがいいか迷う」

そのようなときはオールリスク型の保険を検討しましょう。

「事業活動包括保険」などの名称で販売されている商品は、建物・設備などから休業による利益減少まで、事業活動全般をカバーできます。

まとめ

今回は法人向けの保険について、生命保険・損害保険の種類について解説しました。

本記事をおさらいすると、
生命保険は特徴の異なる7種類があり、いずれも加入目的を明確にすべき
法改正により損金算入のルール変更があり、節税対策は以前ほど期待できない
生命保険における保険金や解約返戻金は、課税後の受取額をシミュレーションした方がいい
損害保険は多種多様なので、事業内容や会社の状態に合わせて加入する

保険の知識を最低限備えておかないと、ムダな出費や保険会社の養分になりかねません。
保険選びは複数の専門家に相談したり、経営者仲間の意見を取り入れたりするのも効果的でしょう。

これらを踏まえて、会社のもしものときにしっかりと備えておきましょう。



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監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属大学卒業後、一般企業を経て
平成15年4月 シン中央会計 入社
平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。

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印紙税とは何か知りたい
どんなときに課税されるの?節税できないの?

こんな悩みにお答えします。

会社の商取引において、切っては切り離せない税金が『印紙税』です。

「利益に対して税金を納めてるのに、文書にまで課税するなんて...」と感じている方も多いのではないでしょうか。

とはいえ印紙税の納付を怠ると、通常の3倍の税金を支払うことになります。

本記事を読むメリットは、
国税庁の資料をもとに、印紙税について網羅的にわかる
印紙税を払わなくていい方法がわかる
印紙税のうっかりミスへの対処法がわかる

最後までご覧いただくと印紙税についての理解が深まりますので、ぜひご一読ください。

印紙税とは文書に課税される税金のこと

印紙税は金銭のやり取りに関する文書を作るときに課税されます。
法人税のように直接的に納める税金ではなく、収入印紙を購入して間接的に納める税金です。

印紙税の歴史的背景

印紙税は17世紀に西欧諸国で誕生しました。
当時は戦争も多く、国は戦費の調達や財政再建のために資金を調達する必要がありました。

そこで国民になるべく重税感を与えずに税金を徴収する方法として、広く薄く、多くの国民から徴収できる文書に対して課税をはじめたのです。

日本では1873年に導入され、約150年続く重要な国家財源のひとつとして機能しています。

なお、現在は西欧諸国で採用されていません。

印紙税の納税方法

収入印紙を買って、文書に貼り付けて納税します。

収入印紙の貼り付ける場所に決まりはなく、一般的に契約書は左上のスペースに、領収書は指定の貼り付け欄に、指定がなければ空いているスペースに貼ります。

ただし、消印がないと納税したことになりません。

消印は契約当事者や代理人・使用人などの印鑑や署名によって行い、複数いる場合は代表者1名が行います。印鑑の種類に決まりはなく、シャチハタでも問題ありません。

納税義務者は課税文書を作った人

課税文書の作成者が納税義務を負い、1つの文書を共同で作った場合は作成者が連帯して納税義務を負います。

【領収書の場合】
お客様に領収書を渡すときに納税義務が発生し、領収書を発行した者が納税義務を負います。

【工事請負契約書の場合】
契約当事者の意思の合致を証明する目的で作られる契約書などは、一般的に双方が署名・捺印したときに納税義務が発生します。

1つの課税文書を2者が共同して作成した場合は、2者が連帯して納税義務を負います。

収入印紙の購入方法

収入印紙は31種類あり、額面に応じて現金で購入します。
なお、払い戻しはないのでご注意ください。

買いやすい場所は店舗数が多い郵便局とコンビニです。
郵便局の場合、在庫の都合上、大量の収入印紙や大きな額面の収入印紙を買うときは事前に確認しましょう。

一般的にコンビニで購入できる収入印紙の額は200円ですが、コンビニによっては取り扱いがない場合もありますので気をつけましょう。

他には下記の場所でも買えます。
・法務局
・役所、役場
・コンビニ
・金券ショップ
・スーパーのサービスカウンター

法務局はすぐに行ける場所になく、役所では収入印紙の扱いが限られる場合があります。
金券ショップでは安く買えますが、消費税の課税や仕分けのルールが異なるのでご注意ください。

印紙税の対象となる課税文書は20種類

下記の3つすべてに該当する文書が課税文書です。

(1)印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること
(2)当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること
(3)印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと


引用:国税庁『No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断』
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7100.htm/

特に下記の文書はビジネスシーンで多く使われます。

作成する文書がどの種類に該当するかは、形式的ではなく実質的な意味で判断します。
文書のタイトルなどから判断するのではなく、文書に書かれている内容で判断しましょう。

一例ですが、17号文書にあたる領収証の印紙税額は次のとおりです。

※受取金額の記載のないものは200円

このように印紙税額はそれぞれの文書の種類ごとに決まっています。
国税庁『印紙税の手引き』がとてもわかりやすいので必ず確認しておきましょう。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/tebiki/01.htm/

これらに当てはまらない文書を『非課税文書』と言い、印紙税を納める必要はありません。

非課税文書を知れば節税にもつながる

ちょっとした節税におつながりますので、非課税文書について理解を深めておきましょう。

国税庁『印紙税の手引き』にも記載があるように、

・委任状
・建物の賃貸借契約書
・記載金額が1万円未満の契約書
・記載金額が5万円未満の受取書や領収書
・国や地方公共団体が作成した文書
・営業に関しない受取書


などは課税されません。

ただし、課税の対象かどうかは細く変動する可能性がありますので、税務署や税理士にアドバイスを求めたり、国税庁HPを確認したりしましょう。

では、課税されない主なケースを4つをご紹介します。
・5万円未満の領収書
・クレカで払ったことがわかる領収書
・電子メールやFAXでやり取りした領収書
・電子契約書

5万円未満の領収書

領収書に限らず、レシートも同じです。

税込で記載している場合は税込の金額、消費税を分けて記載している場合は税抜きの金額で判断します。

金額によっては消費税の有無で印紙税を払わなくていいケースもありますので、総額だけではなく消費税を分けて記載するほうがいいでしょう。

クレカで払ったことがわかる領収書

5万円以上の決済だとしても、クレジットカードでの支払いだと収入印紙は必要ありません。

なぜなら信用取引により商品を渡しており、金銭の受取書に該当しないからです。

ただし、発行した領収書にクレジットカード払いであったことの記載が必要です。

電子メールやFAXでやりとりした領収書

PDFにした領収書を電子メール・FAXで送った場合も、書面を発行しているわけではないので課税文書とはみなされません。

5万円以上のやりとりだとしても収入印紙は不要です。

電子契約書

電子上で作成した契約書は課税文書とみなされませんので、電子契約の場合も収入印紙は不要です。

双方合意のもとで電子契約で進められるなら節税につながりますね。

印紙税にまつわるペナルティ【過怠税は通常の3倍】

過怠税の対象になると、本来納めるべき納税額の2倍に相当する額が追加されます。

もともと1万円の税額であれば、2倍の2万円が追加されて3万円を支払わなければなりません

・貼るべき収入印紙が貼られていない
・納めるべき納税額に不足がある


このような場合はご注意ください。

なお、自ら誤りに気づいて申告すれば、納税額の1.1倍の過怠税で済みますが、罰則にかかる違反金の納付などと同じく、過怠税も損金算入はできません

ただし、収入印紙を貼り忘れても契約自体は有効です。

過誤納還付

誤って納付した印紙税は還付してもらえます

具体的には次のような場合です。
納付額を超過する収入印紙を貼ってしまった
非課税文書に収入印紙を貼ってしまった
課税文書に収入印紙を貼ったけど使う見込みがなくなった

『印紙税過誤納確認申請書』に必要事項を記入し、納税地の税務署に提出します。
過誤納の事実が認められれば返金を受けられます。

収入印紙の交換

汚損や棄損していない収入印紙は、郵便局で他の額面の収入印紙と交換できます。

ただし、現金への交換はできず、収入印紙1枚につき5円の手数料がかかります。

課税文書が多い時の納税対策

事前に税務署に届出すれば、収入印紙を貼らなくても納税する方法があります。

税印を押す方法
印紙税納付計器により納税印を押す方法
書式表示による方法
預貯金通帳での一括納付

税印を押す方法は税務署により対応可否が分かれますので事前の確認が必要ですし、その他の方法も税務署からの承認が必要です。

詳細は下記リンクよりご確認ください。
国税庁『印紙を貼らないで印紙税を納付する方法』
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/06/04.htm/

課税文書を扱う機会が多い会社ほど、業務効率化に直結するでしょう。

印紙税に関するよくある質問

電子マネー決済時に収入印紙は必要?

電子マネーは現金と同じ扱いですので、領収書などには収入印紙を貼る必要があります。

クレジットカードなどと混同して納税し忘れないように気をつけましょう。

収入印紙は経費にできる?

収入印紙は使った時に経費にできます。

「決算で経費にしたいからまとめ買いしておこう!」は通用しません。
実際に文書に貼付して使わないと否認されます。

印紙税に軽減措置はないの?

令和6年3月31日までの軽減措置として、

不動産譲渡契約書
建設工事請負契約書
一定の条件を満たせば印紙税が軽減されます。

なお、起算点は契約日ではなく文書の作成日です。

軽減措置についての詳細は下記リンクよりご確認ください。
国税庁「「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の 印紙税の軽減措置の延長について」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/pdf/0020003-096.pdf/

印紙税の貼り忘れはいつ指摘されるの?

印紙税単独での税務調査もありえますが、所得税・法人税の税務調査時に併せて指摘されることが多いです。
常日頃から収入印紙の貼り忘れが無いか、確認する仕組みを構築しておきましょう。

税務調査時に印紙税の指摘をされたけど、税理士が事前に教えてくれなかった!

印紙「税」なので税理士の専門分野と思いがちですが、所得税や法人税、消費税と異なり、印紙税は税務代理を認めておりません。

すなわち、税務調査時にも基本的には税理士抜きで調査に臨まなければなりません。
そのため、事業主様がしっかりと知識をつけておく必要があります。

まとめ

今回は印紙税とは何かについて解説しました。

本記事の内容をまとめると、
印紙税とは金銭のやり取りに関する文書の作成者が、収入印紙を貼って納める税金
課税文書は20種類あり、非課税文書は印紙税を納めなくていい
過怠税は通常の3倍の税額がかかるが、場合によっては収入印紙の返金・交換が認められる

うっかりミスで余計な税金を払わないように注意しましょう。

本記事で紹介した国税庁の参考資料なども活用しつつ、正しく印紙税を納めましょう。



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監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属大学卒業後、一般企業を経て
平成15年4月 シン中央会計 入社
平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。

※本サイトに掲載の内容は、令和5年8月現在の法令に基づき作成しております。

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