コラム

会社の書類って『なに 』を『いつまで』保存する必要があるの?
書類管理のコツや廃棄方法を知りたい

こんな悩みにお答えします。

会社では法律で一定期間の保存が義務付けられた多くの書類を扱います。
不要と判断し廃棄しても、法的に保存する必要があり法律違反となることも。

また、不適切な書類保存や廃棄方法が個人情報の流出につながった事例も見受けられます。

適切な文書管理ができないと会社の信用を大きく落とすことにつながりかねません。

本記事を参考に、書類の保存期間に関する正しい知識を身につけましょう。

会社で扱う書類の保存期間まとめ

会社で扱う書類の多くは、会社法や法人税法などあらゆる法律により保存期間が定められているので、自由に処分できません。

また、どの法律に基づくかで書類の保存期間は異なります。

以下では具体例を交えつつ、保存期間について書類の種類別に解説していきます。

永久保存する書類

厳密には、法律で保存期間が定められているわけではありません。
しかし、文書の性質上、多くの企業が永久保存している文書を紹介します。


保存期間が40年の書類


保存期間が30年の書類


保存期間が10年の書類


保存期間が7年の書類

7年保存する書類には、10年保存する書類と重複する書類があります。
これらは基づく法律が異なるので、保存期間に違いが生じているのです。

長い方の10年に合わせて書類を保存しましょう。


保存期間が5年の書類


保存期間が4年の書類


保存期間が3年の書類


保存期間が1~2年の書類


任意で保存する書類はルール決めが肝心

任意保存する書類とは、保存期間に定めのない書類を指します。
保存期間に定めのない書類はルールを決めて管理しましょう。

特に法的根拠や決まりはありませんが、

契約期限を伴う覚書・念書・協定書
重要なやりとりに関する発信・受信文書

これらは5年を目安に保管するのが一般的です。

【ルール決めのポイント】
社内統一基準を設けて独自のルールを整備する
「短期」「中期」「中長期」「長期」など、大まかにでも分類する
「業務遂行上の必要性」「トラブルや訴訟時における立証上の必要性」「会社の歴史上の重要性」を考慮する

これらのポイントを踏まえてファイリングし、書類廃棄までは適切に管理しましょう。

書類保存のポイントと注意点

書類のファイリング方法
書類保存時のセキュリティ対策

これらは任意保存する書類に限らず、会社で扱うすべての文書で気をましょう。

書類ファイリング時もルール決めが肝心

徹底管理にはルール整備が効果的です。

社長ひとりではなく、従業員なども均一に書類を扱う必要があるからです。

書類をファイリングする際は、

・文書の種類
・発行日
・受領日
・取引先名
・事業年度
・保存年限別

などで分類していきましょう。

『書類管理台帳』の作成や、『書類管理マニュアル』などの作成も良いでしょう。
保存場所・保存期間・廃棄方法なども決め、廃棄日等も記入して管理すると把握しやすいです。
書類保存時には万全のセキュリティ対策を

セキュリティ対策には力を入れましょう。

個人情報の漏洩や機密情報の流出は、会社としての信用を下げ、大きな損害に直結します。

書類の保存場所は

社内倉庫
社外倉庫
もしくは電子化してクラウドサービスなどのオンライン保管

などがあります。

【社内倉庫の場合】
持ち出し書類の台帳管理
入退室の記録(ICカードでの記録、入室ログの蓄積など)
入室人数の制限や入室権限の付与

【社外倉庫の場合】
厳重な施錠管理
SECOMやALSOKなどのセキュリティサービスの外部委託
書類保管に特化した倉庫サービスの利用

【クラウドサービスなどのオンライン管理の場合】
アクセス制御や権限設定、ウイルス対策、情報の暗号化、データのバックアップなどが重視されているか
十分な保存容量と信頼できる実績や契約件数があるか
改正電子帳簿保存法に対応しているか

これらを検討しつつ、セキュリティ対策は抜かりなく、大切な書類をしっかり保管しましょう。

『請求書・領収書・契約書・見積書』は電子取引データの保存対策を行おう

会社で扱う書類は、基本的には紙媒体での保存と決められています。

「記録事項の訂正・削除を行った場合の事実内容を確認できること」
「通常の業務処理期間を経過した後の入力履歴を確認できること」

などの要件を満たせば、

記録メディアの活用(CD、DVD、HDD、USB、SD、ディスクなど)
文書管理システムの導入(自社サーバーの設置、クラウドストレージサービスの活用など)

これらの方法による電子データでの保存も認められてきました。

しかし、今後は『請求書・領収書・契約書・見積書』などは電子データとして保存しなければいけません。

所得税・法人税に関する帳簿書類の保存義務があるすべての人が対象になります。

令和4年1月に「電子帳簿保存法」が改正され、国税関係の帳簿・書類のデータ保存について抜本的な見直しがされたためです。

具体的には、令和6年1月からは請求書・領収書・契約書・見積書などに関する電子取引データを送付・受領した場合には、そのデータを一定の要件を満たした形で電子データとして保存することが求められます。

現在すでに移行期間であり、令和5年12月までは猶予期間が設けられています。

詳細は国税庁HPでも確認できますので、必ず対策しましょう。
参照[国税庁:電子取引データの保存方法をご確認ください]
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0021011-068.pdf/

電子取引データでの保存がもたらすメリット

今後ますますペーパーレス化の流れが進み、電子取引データの取り扱いも浸透するでしょう。

従来のやり方を変更するデメリットはあるものの、以下のようにメリットも多いです。

【業務効率化】
ファイリングするなど物理的な作業が減り、時間が取られない
問い合わせ時にもデスクで対応できる
検索の効率化により業務が効率化される

【コスト削減】
保管場所、セキュリティ対策などの管理コストが減る
郵送代や封筒代の発送コストが減る
書類管理にかかる人的コストが減る

【セキュリティの強化】
システム上で証跡を残すログ管理ができる
タイムスタンプや電子署名での不正対策もできる
パスワード設定や閲覧権限の付与・管理も容易にできる

国税関係の帳簿・書類の電子取引データ以外は、できるところからコツコツ移行させてもよいでしょう。既存書類をスキャンしてデータ化してくれる業者もあります。

先を見越した文書管理の視点も持ち合わせましょう。

保存期間を過ぎた書類の廃棄方法

では、最後に書類の廃棄方法についてご紹介します。

紙で保存された書類は、
シュレッダーによる廃棄
溶解による廃棄
これら2つの方法で廃棄されることが多いです。

それぞれの特徴と注意点を解説します。

【シュレッダーによる廃棄】

機械さえあれば業者を使わず速やかに廃棄できる
廃棄量が多ければ手間と労力がかかる
裁断する際に目が荒いことによる情報漏洩に注意が必要

【溶解による廃棄】
段ボールに梱包したものを渡すだけなので、手間・労力はかからない
業者に情報漏洩する可能性がある
廃棄書類の運搬時に紛失・漏洩するおそれもある

特に個人情報や会社の機密情報の漏えいには注意が必要です。

また、マイナンバーが記載された

扶養控除等申告書
雇用保険被保険者資格取得届
健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届
支払調書

これらの書類は保存期間が過ぎたら迅速に廃棄しましょう。内閣府によって決められています。

情報漏洩に細心の注意を払いつつ、1年に1回など廃棄するタイミングを会社で決めて取り組みましょう。

まとめ

今回は書類の保存期間と保存方法についてお話ししました。

今回のまとめはこちらです。

会社で扱う書類には永久保存すべきものから1年保存のものがある
書類の保存・管理は適切なルールを決めよう
電子取引データでの保存対策を視野に入れよう
廃棄する際には細心の注意を払おう

『コンプライアンスを遵守しているか』という視点でも、書類管理について企業としての責任が問われます。

適切な書類管理は会社の信用を落とさないためにも必須の取り組み。

本記事を参考に、意図しない法律違反や不要な支出をしないためにも必ず対策しておきましょう。



関連コラム:【徹底解説】会社(法人)登記の必要性とは?【節税と信頼向上】


監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属大学卒業後、一般企業を経て
平成15年4月 シン中央会計 入社
平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。

※本サイトに掲載の内容は、令和5年6月現在の法令に基づき作成しております。

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どうして法人名義で車を買うとお得なの?
法人名義で車を買うときに気をつけるべきポイントは?

こんな悩みに答えます。

法人を設立したからには、しっかりと節税対策にも力を入れたいですよね。

実は、車は個人名義よりも法人名義で買う方がお得です。
特に高級車であるほど、お得なことも。

本記事では、
法人名義で車を買うべき理由と4つのメリット
法人名義で車を買うときの4つの注意点
をお伝えします。

大きく節税できるケースがありますので、知らないと損するかもしれません。

法人名義で車を買って節税効果を高めるべく、ぜひ最後までご覧ください。

法人名義で車を買うとお得な理由

お得な理由は下記の2つ。

法人名義で車を買うと社長個人の所得税なども節税できる
減価償却費として経費に計上できる

順番に解説します。

法人名義で車を買うと社長の所得税なども節税できる

法人名義で車を買うと、社長個人の所得税・住民税・社会保険料を軽減できます。

具体例を用いて説明します。

【社長個人が500万円の車を買う場合】
個人が納める税率(所得税+住民税)を50%と仮定すると、個人の手元には1,000万円が必要
法人は個人へ役員報酬として1,000万円を支給しなければならない
個人側では1,000万円の給与が発生するので、その分の所得税・住民税・社会保険料がかかる

つまり、役員報酬の半分にあたる500万円を納税しなければなりません。

【法人が500万円の車を買う場合】
法人が車の費用として500万円を支払うのみ
個人には所得税・住民税・社会保険料は発生しない

このように法人名義で車を買った方が、500万円を余分に支払わずに済みます。

減価償却費として経費に計上できる

法人名義で車を買うと、減価償却ができますので、法人税の節税につながります。

【減価償却とは】
10万円以上の価値があり、1年以上使用できる固定資産を、耐用年数に基づいて費用計上すること

【償却方法は2種類】
定額法:毎年の減価償却費が同額になるように計算
定率法:資産の帳簿価額に一定の割合を乗じて計算

基本的には定率法で償却する法人の方が、早い段階で節税できるメリットがあります。
それぞれの計算例は下記のとおり。

【500万円の普通車を新車で買った場合】
・償却方法:定額法
・耐用年数:6年(普通車)
・法人税率:30%として計算
・計算方法:5,000,000円×0.167=835,000円(毎年83.5万円が経費)
      835,000円×30%=250,500円(毎年の節税額)
      250,500円×6年≒1,500,000円
      ※本来は残存価額が備忘価額である1円を残して減価償却する

【500万円の普通車を新車で買った場合】
・償却方法:定率法
・耐用年数:6年(普通車)
・法人税率:30%として計算
・計算方法:5,000,000円×0.333=1,665,000円(1年目の節税額:1,665,000円×30%=499,500円)
      3,335,000円×0.333=1,110,555円(2年目の節税額:1,110,555円×30%=333,167円)
      2,224,445円×0.333=740,740円(3年目の節税額:740,740円×30%=222,222円)
      1,483,705円×0.334=495,557円(4年目の節税額:495,557円×30%=148,667円)
      988,148円×0.334=330,041円(5年目の節税額:330,041円×30%=99,012円)
      330,041円−1円=330,040円(6年目の節税額:330,040円×30%=99,012円)

定率法の特徴は次の2つです。
一定の割合で償却費を計算するので、早期に費用化できる
5年目以降のように償却額が保証される(改定償却率・償却保証額を考慮するため)

上記の例はどちらも単純計算ですが、トータルで約150万円を節税できます。

当然、個人が車を購入しても節税にはつながりません。

償却率表は下記の国税庁HPをご参照ください。

『減価償却資産の償却率等表』https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_02.pdf

法人名義で車を買うメリット4つ

法人名義で車を買うメリットを4つご紹介します。

ランニングコストを経費に計上できる
個人で法人から車を安く買える
価値のある資産として緊急時に備えられる
法人向けローンで車を買える

ランニングコストを経費に計上できる

結果的には法人税の節税につながります。

個人事業主にも共通しますが、事業で使う車のコストはすべて経費に計上できるからです。

具体的には下記の費用です。
・車検費用
・ガソリン代
・駐車場代
・自賠責保険料
・自動車保険料
・自動車に関する税金 など

ただし、プライベートの使用分とは切り離してくださいね。

例外はありますが、基本的には事業に関する使用分が経費として認められます。

個人で法人から車を安く買える

法人・個人間での資産の引き継ぎであれば、不要になった車を安い金額で譲渡できます。

下取り査定やオークションなどでは、業者からの手数料や利益が上乗せされるからです。

ただし、安すぎる金額での譲渡は思わぬ税金が発生しかねないのでご注意ください。

価値のある資産として緊急時に備えられる

困った時には車を売れば資金を確保できます。

業績が悪く赤字の見込み
資金繰りに困る
緊急でまとまった資金を用意したい

上記のような有事の際にも、『車を売る』という選択肢を確保できます。

資産として管理していなくても、簿外資産としてのお守りがあると心強いですね。

法人向けローンで車を買える

法人向けローンでは、個人の所得の範囲を超えてもお金を借りられます。

なぜなら、個人向けローンとは異なり、年収の3分の1以上を融資してはいけないという総量規制の制限がないからです。審査では、法人の信用性や支払能力が対象です。

購入資金が大きくてもローンを組めば、事業資金を圧迫しなくなるメリットも。

ただし、法人名義で利用できるローンは限られていますし、もちろん借り入れたお金は事業に使う車の購入が対象です。

ご利用の際は、銀行やカーディーラーなどで相談しましょう。

法人名義で車を買うときの4つの注意点

法人名義で車を買う前に、気をつけるべきポイントを4つ厳選しました。

新車・中古車で減価償却の耐用年数が異なる
車を買うタイミングに気をつける
リセールバリューを意識する
事業内容に適した車を買う

損しないためにも必ずチェックしましょう。

新車・中古車で減価償却の耐用年数が異なる

法人名義で車を買う前に、車に適用される減価償却時の耐用年数に気をつけましょう。

下記のように新車・中古車で考えが異なるからです。

新車の普通乗用車:6年

新車の軽自動車:4年

中古車(普通乗用車)は下記の計算式
 新車の登録から6年以上経過:耐用年数×20%
 新車の登録から6年未経過:(耐用年数-経過年数)+経過年数×20%

 ※端数が出れば切り捨てます。
 ※2年未満となれば、2年を耐用年数として適用します。

法人で車を買う際には、事前に押さえておきましょう。
節税対策に直結するからです。

その理由は以下で深掘りします。

3年10ヶ月を経過した中古車がおすすめ

法人名義で車を買うなら、中古車での購入が節税効果が高いのでおすすめです。

その理由は、

新車登録から3年10ヶ月以上経過した車の耐用年数は2年
定率法で計算した場合、耐用年数が2年の中古車は1年目の償却率が100%
車を買った事業年度に、購入費の全額を経費で落とせる(早期に費用化できる)
今後も中古車を買えば、短いスパンで全額を経費にでき、短期間で高級車を乗り換えられる

このようなメリットがあるからです。

法人名義で車を買うなら中古車も必ず検討しましょう。

車を買うタイミングに気をつける

車の購入は決算月の翌月にしましょう。
法人名義で中古車を買って、1年など早期に費用化したい場合はご注意を

減価償却は年単位ではなく、月単位で計算するからです。

【4年落ちの中古車を買う場合】
○:3月決算の法人が4月に納車→12ヶ月にわたり全額を経費にできる
×:3月決算の法人が3月中に納車→その年度は1ヶ月分しか経費にならない

ローンで買う場合も考え方は同じです。
ただし、起算点はローンを組んだ日ではなく、車両を納車した日になるのでお忘れなく。

リセールバリューを意識する

法人名義で車を買うなら、必ず高値で売れる車(リセールバリューが良い車)を購入しましょう。

下記のようなメリットがあります。
高値で売れるので手元にお金が残る
価値のある資産として、より多くの金額を有事の際に備えられる
次回の車の購入費により多く充てられる

また、リセールバリューに良い車の特徴は、
国内もしくは海外で人気(需要)がある車
納期に時間がかかる車
希少性の高い車(数量限定販売、生産中止モデル)
ボディーカラーが白や黒

たとえば、国内車だとアルファードやランドクルーザー、外車だとベンツのGクラスなどは値崩れがしにくく、とても人気のある車種として有名です。

法人名義で車を買ったなら売るまで、出口戦略をしっかり立てておきましょう。

事業内容に適した車を買う

「高値で売れる高級車なら、思いきってフェラーリを買おう!」という考えにはご注意を。

法人名義で買う車は、

事業をするうえで必要か
公私の区別がついているか
車の購入費が事業で得られる利益と照らして不相当ではないか
 (今期利益が1,000万円なのに、2,000万円の高級車を買うなど)

などを証明できるように、客観的な証拠を残しましょう。

経費で落とす以上、税務署は事業との関連性・必要性・妥当性などを必ずチェックします
場合によっては経費として認められないケースもあるので気をつけてくださいね。

まとめ

今回は個人名義より法人名義で車を買う方が、圧倒的に有利な仕組みについて解説しました。

経費へ計上でき、法人税や社長個人の所得税などを節税できる
価値のある資産として残し、有事への備えにもなる
約4年落ちの中古車を決算月の翌月に買えば、1年で減価償却できる(法人税の節税)
法人の事業内容に違和感のない、売れる車を選ぶべき

特に記事の後半の注意点は要チェックです。
節税しつつ、お得に賢く、車選びを進められること間違いなしです。

本記事でお伝えした内容を参考に、法人名義で車を買うメリットを最大限に活かしましょう。



関連コラム:【法人成り】車両の引き継ぎは『売買』がおすすめ【3パターンで解説】
関連コラム:使ったお金が全て経費になるわけではない?資産計上と減価償却


監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属


大学卒業後、一般企業を経て
 平成15年4月 シン中央会計 入社
 平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
 平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任

主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。


※本サイトに掲載の内容は、令和5年6月現在の法令に基づき作成しております。

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少しでも多くのお金を会社に残したい
利益予測ができないから役員報酬をゼロにしたい
役員報酬を少なくした場合の注意点は?

役員報酬を決める際の悩みは尽きないもの。
マイクロ法人などのオーナー社長からはよく質問をいただきます。

実は...役員報酬を少なくすることで落とし穴にハマる危険があることをご存知でしょうか。
将来的なお金の減少や、会社としての信用を落とすリスクも。


本記事では、前半部分で役員報酬を少なくするメリット・デメリットを解説し、後半部分では役員報酬の決め方や注意点を解説しています。

「こうしておけばよかった」という後悔を避けられますので、ぜひ最後までご覧ください。

役員報酬を少なくする3つのメリット

実際に役員報酬をゼロにする経営者もいますが、どのようなメリットを受けているのでしょうか。

メリットは次の3つです。

個人の税金や社会保険料を抑えられる
会社を軌道に乗せられる
将来のキャッシュを増やせる

では、順番に解説します。

【メリット①】個人の税金や社会保険料を抑えられる

極端な話、役員報酬をゼロ円にすると個人が支払う所得税・住民税・社会保険料もゼロ円になります。

役員報酬は税法上、会社員や従業員が受け取る給与所得と同じ扱いを受けるからです。

役員報酬といえどもサラリーマンの給与所得と同じように、年末には所得税・住民税・社会保険料が源泉徴収されます。

ちなみに役員報酬と従業員等の給与所得との大きな違いはこちら。

労務への対価ではなく、役員という責任への対価
最低賃金の考え方はない
報酬金額をゼロ円にできる

上記の違いにより、社長個人としての所得にまつわる税金を極限まで抑えられるメリットがあります。

【メリット②】会社を軌道に乗せられる

個人にお金を残さないということは、裏を返すと会社にお金が残ることになります。

つまり会社設立初期など、会社経営を軌道に乗せるために会社へ資金を残せるメリットがあります。

会社が安定して収益を上げられるまでは、あえて役員報酬をゼロ円にする経営者も。

ただ、後述するデメリットは必ず押さえてくださいね。

【メリット③】将来のキャッシュを増やせる

すでにある制度や仕組みを活用した場合です。

これらの対策を行えば、少ない役員報酬としながらも会社として積立しつつ節税ができるので、将来的に個人に還元されるお金を増やせます。

養老保険や年金保険(※保険の内容・加入者によっては経費計上できない恐れも御座います。専門家へご相談ください)
経営セーフティ共済
役員社宅などの福利厚生制度


戦略的に節税しながら将来のお金を貯められるわけですね。

うまく活用していきましょう。

役員報酬を少なくする5つのデメリット

とはいえ、役員報酬を少なくする前にデメリットを十分に把握しましょう。
実は...デメリットの方が多いんです。

デメリットは次の5つです。

①全体的に節税にならない場合がある
②社会保険に加入できなくなる
③年金の受給額が少なくなる
④生活費がなくなり役員貸付金へ手を出してしまう
⑤融資が受けられない可能性がある

順番に解説します。

【デメリット①】全体的に節税にならない場合がある

結局、個人と法人の所得に対して何%課税されるかにより損得が分かれます。

個人の納税額を考えると、役員報酬が少ない方がメリットがあるでしょう。
しかし、一方で法人の納税額はその分増えてしまいます。

例えるなら、シーソーのような関係性。
もちろん会社の利益や規模などにも左右されますが。

ですので、個人と法人へ課税される分岐点を見極めないと、節税効果が薄まります。

特に、マイクロ法人を運営するオーナー社長の場合は、個人であろうと法人であろうと最終的には自分の負担となりますのでご注意を。

【デメリット②】社会保険に加入できなくなる

基本的に役員報酬がゼロ円の場合、社会保険の加入が断られます。
要件を満たさないことが原因だからです。

その場合は国民健康保険へ加入することになります。

さらに、下記のデメリットも発生します。

世帯全体の保険料が多くなる
傷病手当金と出産手当金などを受給できない

国民健康保険と違い、社会保険では親族を扶養に入れられます。
つまり、家族の社会保険料の負担はゼロ円に。

しかし、国民健康保険の場合は家族全員が保険料を負担する必要があるのです。

また、社会保険には傷病手当金や出産手当金などの受給資格が付与されます。
これらは条件を満たせば大きな金銭的なメリットとなるでしょう。

社会保険に加入する方がメリットが多いと言われるのは上記の理由があるからですね。

【デメリット③】年金の受給額が少なくなる

役員報酬をゼロ円とした場合、社会保険へ加入できず厚生年金の受給資格も失います。

受給できる年金は国民年金のみとなり、将来受け取る年金も減ることに。

こちらも厚生年金に加入した方がメリットが多いと言われるポイントです。

安易に役員報酬をゼロ円とせずに、将来への影響予測をしっかり行いましょう。

【デメリット④】生活費がなくなり役員貸付金へ手を出してしまう

少ない役員報酬では生活費が足りなくなる恐れがあります。

当然、会社からの役員報酬以外に所得がない限り生活はできませんよね。

個人としての所得がなく生活に困窮する場合はどうするのか?

そこで考えられるのが会社への借入。
役員報酬がない(もしくは少ない)ので、会社からお金を借入金として引き出すことに。

これは会社から見ればオーナー社長への『貸付金』となります。

決算書上は『役員貸付金』となり、税務上は認定利息を計上しないといけません。
つまり、会社にとっては利益の発生を意味しますので、その分の法人税等の負担が発生します。


さらなる懸念点は次のとおりです。

【デメリット⑤】役員貸付金が原因となり融資が受けられない可能性がある

役員貸付金には

融資元の信頼を失いかねない
結果的に節税にならない

という、2つのリスクが伴います。

融資元の信頼を失いかねない

役員貸付金は銀行などの融資元に非常に嫌われます。

通常、お金を貸す銀行は民間の調査会社を使って信用調査を行いますが、役員貸付金も必ずチェックされます。

もちろん調査を断れますが、多くの場合は融資元からの依頼で行われるのでプラスに働くことはないでしょう。

適切に役員報酬が設定されていないと、融資元の信頼を失うことにつながりかねません。

銀行などの融資元は下記のようなリスク管理をしています。

・事業以外の目的で融資したお金を使われるかもしれない
・融資したお金が戻ってこないかもしれない

また、役員報酬を少なくした結果として役員貸付金を作ってしまうと

どうして役員貸付金が発生したのか?
今後どのように解消するのか?

を問われ続けられます。

役員貸付金の額が大きかったり、年々増えている場合は特にご注意を。

役員報酬以外にも収入がある
家族に一定の収入がある

などの理由があれば別ですが、創業融資などでは悪い印象につながりかねません。

ちなみにこのような場合、結果的には役員報酬を増額した(役員貸付金はないもの)と仮定して審査が進むことになります。

結果的に節税にならない

先に節税した部分を、事後的に支払う構造になりかねません。

役員貸付金を解消するには、役員報酬に加えて返済分の支給を受ける必要があります。

ということは、個人の受け取る金額は『役員報酬+返済分』になり、所得税・住民税・社会保険料の負担が大きくなってしまうからです。

結果的に、役員報酬を少なくして節税した部分を後から埋める構造になってしまいます。

役員報酬は先を見通して決めよう


役員報酬を少なくする場合には、先を見通した金額設定を行いましょう。

その理由は下記の2点。

役員報酬は期中に変更できない
設立3期目からは消費税の支払いがある

ぜひ参考にしてください。

役員報酬は期中に変更できない

役員報酬は定期同額給与の考え方に基づき、変更できるのは事業年度開始から3ヶ月以内と決まっています。

それ以降の変更は金額の低い方を定期同額給与とみなされますし、増えた役員報酬の金額は経費として計上できません。

さらに、赤字であっても役員報酬は決めた金額を必ず支払わないといけません。

つまり先を見通す力が求められます。

例えば、

役員報酬を差し引く前の利益を出す
将来的に必要になる支出を見積もる
役員報酬が必要資金に食い込まないか事前予測する

このように年間の収支や経営状況の見通しを踏まえた報酬金額の設定を行いましょう。

また、法人税と個人にかかる税金をシミュレーションすることもお忘れなく。

「役員報酬は低けりゃいい!」ってものではなく、法人と個人とでの税負担のバランスが重要です。

もちろん対外的に資金調達を必要としない会社は、役員報酬をゼロ円にしても問題ないでしょう。

しかし、役員報酬のゼロ円にはリスクも伴うので、無理のない範囲で役員報酬はきちんと設定することをおすすめします。

設立3期目からは消費税の支払いがある

会社を設立して1〜2期目は、基準期間がありません。
そのため、特例の判定に抵触しなければ、免税事業者に該当するため、3期目まで消費税の支払いがありません。

しかし、3期目以降は消費税の支払いが発生しますので、役員報酬を上げる場合にも先を見通した設定を行いましょう。
 ※基準期間の課税売上高が1,000万円超で課税事業者となります。
  1,000万円以下の場合も、特定期間の判定や、課税事業者選択届出書の提出の有無は確認します。

まとめ

今回は役員報酬を少なくした場合のメリット・デメリットについてお話ししました。

盲点となりがちなデメリットをおさらいしましょう。

全体的に節税にならない場合がある
社会保険に加入できなくなる
年金の受給額が少なくなる
生活費がなくなり役員貸付金へ手を出してしまう
役員貸付金が原因となり融資が受けられない可能性がある

必ずしも役員報酬が少ないからといって良いことばかりではありません。

個人での所得税を負担することを前提に、役員報酬を少しでも支給して、将来を見通した社会保険への加入や、資金調達を視野に入れた対外的な信用対策を念頭におきましょう。

また、株主が一人であれば、法人の財産は最終的に株主の元へ行き、課税されます。
配当で得るのか、退職金で得るのか、株式譲渡で資産を得るのか、出口までイメージしましょう。


その際は適切なシミュレーションが必須です。
専門家への相談も視野に入れることもおすすめです。

法人の所得や個人の所得、家族構成や今後の利益予測等、総合的に判断していきましょう。



関連コラム:創業初期は特に注意!役員貸付金はデメリット大
関連コラム:役員報酬の決め方


監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属


大学卒業後、一般企業を経て
 平成15年4月 シン中央会計 入社
 平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
 平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任

主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。


※本サイトに掲載の内容は、令和5年6月現在の法令に基づき作成しております。

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少しでも多くのお金を会社に残したい
利益予測ができないから役員報酬をゼロにしたい
役員報酬を少なくした場合の注意点は?

役員報酬を決める際の悩みは尽きないもの。
マイクロ法人などのオーナー社長からはよく質問をいただきます。

実は...役員報酬を少なくすることで落とし穴にハマる危険があることをご存知でしょうか。
将来的なお金の減少や、会社としての信用を落とすリスクも。

本記事では、前半部分で役員報酬を少なくするメリット・デメリットを解説し、後半部分では役員報酬の決め方や注意点を解説しています。

「こうしておけばよかった」という後悔を避けられますので、ぜひ最後までご覧ください。

役員報酬を少なくする3つのメリット

実際に役員報酬をゼロにする経営者もいますが、どのようなメリットを受けているのでしょうか。

メリットは次の3つです。

①個人の税金や社会保険料を抑えられる
②会社を軌道に乗せられる
③将来のキャッシュを増やせる

では、順番に解説します。

h3 【メリット①】個人の税金や社会保険料を抑えられる

極端な話、役員報酬をゼロ円にすると個人が支払う所得税・住民税・社会保険料もゼロ円になります。

役員報酬は税法上、会社員や従業員が受け取る給与所得と同じ扱いを受けるからです。

役員報酬といえどもサラリーマンの給与所得と同じように、年末には所得税・住民税・社会保険料が源泉徴収されます。

ちなみに役員報酬と従業員等の給与所得との大きな違いはこちら。

・労務への対価ではなく、役員という責任への対価
・最低賃金の考え方はない
・報酬金額をゼロ円にできる

上記の違いにより、社長個人としての所得にまつわる税金を極限まで抑えられるメリットがあります。

h3 【メリット②】会社を軌道に乗せられる

個人にお金を残さないということは、裏を返すと会社にお金が残ることになります。

つまり会社設立初期など、会社経営を軌道に乗せるために会社へ資金を残せるメリットがあります。

会社が安定して収益を上げられるまでは、あえて役員報酬をゼロ円にする経営者も。

ただ、後述するデメリットは必ず押さえてくださいね。

h3 【メリット③】将来のキャッシュを増やせる

すでにある制度や仕組みを活用した場合です。

これらの対策を行えば、少ない役員報酬としながらも会社として積立しつつ節税ができるので、将来的に個人に還元されるお金を増やせます。

・養老保険や年金保険(※保険の内容・加入者によっては経費計上できない恐れも御座います。専門家へご相談ください)
・経営セーフティ共済
・役員社宅などの福利厚生制度

戦略的に節税しながら将来のお金を貯められるわけですね。

うまく活用していきましょう。

h2 役員報酬を少なくする5つのデメリット

とはいえ、役員報酬を少なくする前にデメリットを十分に把握しましょう。
実は...デメリットの方が多いんです。

デメリットは次の5つです。

①全体的に節税にならない場合がある
②社会保険に加入できなくなる
③年金の受給額が少なくなる
④生活費がなくなり役員貸付金へ手を出してしまう
⑤融資が受けられない可能性がある

順番に解説します。

h3 【デメリット①】全体的に節税にならない場合がある

結局、個人と法人の所得に対して何%課税されるかにより損得が分かれます。

個人の納税額を考えると、役員報酬が少ない方がメリットがあるでしょう。
しかし、一方で法人の納税額はその分増えてしまいます。

例えるなら、シーソーのような関係性。
もちろん会社の利益や規模などにも左右されますが。

ですので、個人と法人へ課税される分岐点を見極めないと、節税効果が薄まります。

特に、マイクロ法人を運営するオーナー社長の場合は、個人であろうと法人であろうと最終的には自分の負担となりますのでご注意を。

h3 【デメリット②】社会保険に加入できなくなる

基本的に役員報酬がゼロ円の場合、社会保険の加入が断られます。
要件を満たさないことが原因だからです。

その場合は国民健康保険へ加入することになります。

さらに、下記のデメリットも発生します。

・世帯全体の保険料が多くなる
・傷病手当金と出産手当金などを受給できない

国民健康保険と違い、社会保険では親族を扶養に入れられます。
つまり、家族の社会保険料の負担はゼロ円に。

しかし、国民健康保険の場合は家族全員が保険料を負担する必要があるのです。

また、社会保険には傷病手当金や出産手当金などの受給資格が付与されます。
これらは条件を満たせば大きな金銭的なメリットとなるでしょう。

社会保険に加入する方がメリットが多いと言われるのは上記の理由があるからですね。

h3 【デメリット③】年金の受給額が少なくなる

役員報酬をゼロ円とした場合、社会保険へ加入できず厚生年金の受給資格も失います。

受給できる年金は国民年金のみとなり、将来受け取る年金も減ることに。

こちらも厚生年金に加入した方がメリットが多いと言われるポイントです。

安易に役員報酬をゼロ円とせずに、将来への影響予測をしっかり行いましょう。

h3 【デメリット④】生活費がなくなり役員貸付金へ手を出してしまう

少ない役員報酬では生活費が足りなくなる恐れがあります。

当然、会社からの役員報酬以外に所得がない限り生活はできませんよね。

個人としての所得がなく生活に困窮する場合はどうするのか?

そこで考えられるのが会社への借入。
役員報酬がない(もしくは少ない)ので、会社からお金を借入金として引き出すことに。

これは会社から見ればオーナー社長への『貸付金』となります。

決算書上は『役員貸付金』となり、税務上は認定利息を計上しないといけません。
つまり、会社にとっては利益の発生を意味しますので、その分の法人税等の負担が発生します。

さらなる懸念点は次のとおりです。

h3 【デメリット⑤】役員貸付金が原因となり融資が受けられない可能性がある

役員貸付金には

・融資元の信頼を失いかねない
・結果的に節税にならない

という、2つのリスクが伴います。

h4 融資元の信頼を失いかねない

役員貸付金は銀行などの融資元に非常に嫌われます。

通常、お金を貸す銀行は民間の調査会社を使って信用調査を行いますが、役員貸付金も必ずチェックされます。

もちろん調査を断れますが、多くの場合は融資元からの依頼で行われるのでプラスに働くことはないでしょう。

適切に役員報酬が設定されていないと、融資元の信頼を失うことにつながりかねません。

銀行などの融資元は下記のようなリスク管理をしています。

・事業以外の目的で融資したお金を使われるかもしれない
・融資したお金が戻ってこないかもしれない

また、役員報酬を少なくした結果として役員貸付金を作ってしまうと

・どうして役員貸付金が発生したのか?
・今後どのように解消するのか?

を問われ続けられます。

役員貸付金の額が大きかったり、年々増えている場合は特にご注意を。

・役員報酬以外にも収入がある
・家族に一定の収入がある

などの理由があれば別ですが、創業融資などでは悪い印象につながりかねません。

ちなみにこのような場合、結果的には役員報酬を増額した(役員貸付金はないもの)と仮定して審査が進むことになります。

h4 結果的に節税にならない

先に節税した部分を、事後的に支払う構造になりかねません。

役員貸付金を解消するには、役員報酬に加えて返済分の支給を受ける必要があります。

ということは、個人の受け取る金額は『役員報酬+返済分』になり、所得税・住民税・社会保険料の負担が大きくなってしまうからです。

結果的に、役員報酬を少なくして節税した部分を後から埋める構造になってしまいます。

h2 役員報酬は先を見通して決めよう

役員報酬を少なくする場合には、先を見通した金額設定を行いましょう。

その理由は下記の2点。

・役員報酬は期中に変更できない
・設立3期目からは消費税の支払いがある

ぜひ参考にしてください。

h3 役員報酬は期中に変更できない

役員報酬は定期同額給与の考え方に基づき、変更できるのは事業年度開始から3ヶ月以内と決まっています。

それ以降の変更は金額の低い方を定期同額給与とみなされますし、増えた役員報酬の金額は経費として計上できません。

さらに、赤字であっても役員報酬は決めた金額を必ず支払わないといけません。

つまり先を見通す力が求められます。

例えば、

・役員報酬を差し引く前の利益を出す
・将来的に必要になる支出を見積もる
・役員報酬が必要資金に食い込まないか事前予測する

このように年間の収支や経営状況の見通しを踏まえた報酬金額の設定を行いましょう。

また、法人税と個人にかかる税金をシミュレーションすることもお忘れなく。

「役員報酬は低けりゃいい!」ってものではなく、法人と個人とでの税負担のバランスが重要です。

もちろん対外的に資金調達を必要としない会社は、役員報酬をゼロ円にしても問題ないでしょう。

しかし、役員報酬のゼロ円にはリスクも伴うので、無理のない範囲で役員報酬はきちんと設定することをおすすめします。

h3 設立3期目からは消費税の支払いがある

会社を設立して1〜2期目は、基準期間がありません。
そのため、特例の判定に抵触しなければ、免税事業者に該当するため、3期目まで消費税の支払いがありません。

しかし、3期目以降は消費税の支払いが発生しますので、役員報酬を上げる場合にも先を見通した設定を行いましょう。
 ※基準期間の課税売上高が1,000万円超で課税事業者となります。
  1,000万円以下の場合も、特定期間の判定や、課税事業者選択届出書の提出の有無は確認します。

h2 まとめ

今回は役員報酬を少なくした場合のメリット・デメリットについてお話ししました。

盲点となりがちなデメリットをおさらいしましょう。

①全体的に節税にならない場合がある
②社会保険に加入できなくなる
③年金の受給額が少なくなる
④生活費がなくなり役員貸付金へ手を出してしまう
⑤役員貸付金が原因となり融資が受けられない可能性がある

必ずしも役員報酬が少ないからといって良いことばかりではありません。

個人での所得税を負担することを前提に、役員報酬を少しでも支給して、将来を見通した社会保険への加入や、資金調達を視野に入れた対外的な信用対策を念頭におきましょう。

また、株主が一人であれば、法人の財産は最終的に株主の元へ行き、課税されます。
配当で得るのか、退職金で得るのか、株式譲渡で資産を得るのか、出口までイメージしましょう。

その際は適切なシミュレーションが必須です。
専門家への相談も視野に入れることもおすすめです。

法人の所得や個人の所得、家族構成や今後の利益予測等、総合的に判断していきましょう。

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個人事業は順調なので節税面も考慮して今後は法人化しよう!
 でも、個人で使っていた車両はどうやって法人に引き継げばいいんだろう?

個人と法人での減価償却の違いは?どちらがお得か知りたい。
こんな悩みにお答えします。

個人から法人へ車両を引き継ぐには3つの方法があり、結論的には売買契約をもとに引き継ぐのがもっとも負担が軽くベターな選択肢と言えます。

しかし、『なぜ売買による引き継ぎがいいのか?』まで知ることで、より適切な判断ができるでしょう。

本記事では、

法人成りに伴う車両の引き継ぎ方法3つ
法人が引き継いだ車両をお得に減価償却できる理由
車両の名義変更の方法や引き継ぎ時のよくある質問

をお伝えします。

このように法人成りに伴う車両の引き継ぎに関する周辺知識もお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

法人成りに伴う車両の引継ぎは『売買』がおすすめ【3パターンで解説】

個人事業を法人化することを『法人成り』と言います。

法人成りすれば節税面で有利な点もあり、会社として対外的に信頼を得やすいメリットなどもあります。

ここで必要になるのが、個人事業主時代の資産・負債を法人へ譲渡する手続きです。
その際に、法人税法上で考えなければいけないのが『法人が買い取る価額』です。

基本的には時価で取引をしますが、今回は特に車両の引き継ぎについてご紹介します。

法人成りに伴う車両の引き継ぎ方法は主に以下の3つ。

売買契約
賃貸借契約
使用貸借契約

いずれの方法も税務調査では使用実態や資産の所在地を確認されますので、契約書や使用実態のわかる書類は必ず用意しておきましょう。

では、それぞれ順に解説します。

個人・法人間での『売買契約』による引き継ぎ

結論、売買によって譲渡するのがもっともベターな方法です。

売買価額は『時価』に基づき、

中古車査定における買取価額
店頭販売価額

などを参考に決めます。極端に乖離がなければどちらでも問題ありません。
また、時価と帳簿価額の差が少ない場合は、帳簿価額でも問題ないでしょう。

肝心なのは、妙な価額操作をしていないこと。

査定時の見積書を保管しておくなど、客観的に金額の妥当性を説明できるようにしましょう。

経費として計上できる範囲が増える

法人へ名義が変われば、引き継いだ車両の減価償却費を経費として計上できます。
また、ガソリン代・自動車税・保険料・車検代などのランニングコストも経費へ算入して問題ありません。

法人の事業に使われる車両ですので、個人事業主のように仕事とプライベートで使用割合を区別して税務申告する必要はありません。

基本的には全額経費として計上できるというわけです。

『売買契約』による引き継ぎの注意点3つ

会社へ売買(譲渡)して個人に譲渡益が出たなら確定申告が必要
会社の車としての妥当性が求められる
売買契約を結び、代金決済の期限を明記する

1点目の譲渡益が発生した場合は、個人として確定申告をお忘れなく。

2点目ですが、「その車は事業として必要かどうか?」で判断されるので、事業内容に適した車両を引き継ぎましょう。過去にフェラーリなどの高級外国車が否認されたケースがあるようですのでご注意を。

3点目は、税務官へきちんと説明するための対策です。
経費として計上する以上は、税務署に車両の名義が法人に移っている証拠を示せるようにしましょう。また、代金が決済されていないと個人が法人から借り受けしていると判断されるリスクがありますので、代金決済の期限は明記して取引を完了させましょう。

個人・法人間での『賃貸借契約』による引き継ぎ

名義は個人のままで法人に貸し出し、法人は個人に賃料を支払う形態を指します。

たとえば、自動車保険の等級を引き継げず、保険料が高くなるので、個人・法人間で賃貸借契約を結ぶ場合など。

もちろん車両は法人の事業に使用するので、法人は車両のランニングコストを全額経費として計上できます。

ただし、賃料を受け取る個人には雑所得が発生しますので、必ず確定申告をしましょう。

個人・法人間での『使用貸借契約』による引き継ぎ

個人から法人へ車両を無償で貸し出す形態を指します。

本来、無償の取引でも課税関係は発生します。
しかし車両に関しては金額が少ないケースが多いので、課税上の弊害もないとみなされ使用貸借も慣例的に認められています。

こちらも方法でも、法人はランニングコストを全額経費として計上できます。

ただし、あくまで個人所有の車両ですので、法人・個人での使用分は明確に分けましょう。

法人が引き継いだ車両をお得に減価償却できる理由

個人も法人も税務上は所有する車両を減価償却できる点に差はありません。

では、法人成りするとどうしてお得に減価償却できるのでしょうか。

耐用年数
償却方法
償却費の計上が『任意』もしくは『強制』

の違いより紐解いていきます。

中古資産の耐用年数を適用できる

法人成りして車両を引き継いだ場合、法人側では『中古資産』として受け入れます。

つまり、中古資産の耐用年数が適用されますので、新車購入に比べると早期の費用化ができ節税対策につながります。

なお、個人事業主時代の未償却年数を引き継いで減価償却をしてはいけません。

定率法の適用により早期に費用化できる

減価償却では『定額法』『定率法』の2通りの計算方法が用いられます。

定額法:毎年の減価償却費が同額になるように計算する
定率法:資産の帳簿価額に一定の割合を乗じて計算する

そして法人では下図のように、車両の償却方法は自動的に定率法が選択されます。

個人(所得税)→定額法
法人(法人税)→定率法(建物以外)

ですので、定率法を用いる法人では、帳簿残高が大きい初期に減価償却費を多く計上できるのです。

ちなみに、定率法から定額法へと償却方法を変更できますので、その場合は所轄の税務署へ届出を行いましょう。
 ※法人の設立年度の場合は決算申告日が届出書の期日です。

ただし、一旦選択した償却方法は3年間は変更できないのでご注意を。

減価償却費を柔軟に計上できる

法人は減価償却費の計上は任意とされていますので、個人事業主に比べて漏れなく償却費を計上できます。

ちなみに個人事業主の場合は強制と決められており、仮に償却費の計上を忘れてしまうと、その年の償却費は計上できません。

償却費の計上が任意だと、

償却費の計上を忘れた
償却費を少なく計上してしまった
独自の規定で限度額以下で計上した

などの場合も、翌年以降に経費として計上できます。

このように法人の方が償却費をより柔軟に経費計上できるメリットがあります。

※金融機関では、償却限度額で償却があったとみなします。
  そのため、償却額の差異がある場合は償却限度額へと調整を行ってから格付を行います。
  金融機関に対する見栄えをよくする目的で減価償却費を計上しない選択肢をとったとしても、
  効果は薄いので、ご注意ください。

引き継いだ車両の名義変更に必要な書類

個人から法人への名義変更する手続きは、新しい名義人である法人の所在地を管轄する運輸局で行います。

【必要書類一覧】

・自動車検査証
・譲渡証明書
・会社の代表印とその印鑑証明書
・個人の実印とその印鑑証明書
・車庫証明書
・申請書(OCR申請書第1号様式 ←名義変更に必要な書類)
・手数料納付書
・自動車税、自動車取得税申告書
・リサイクル券、自賠責保険証

これらの必要書類を提出して不備がなければ、その場で新しい車検証が交付されます。

なお、取締役名義の車を会社名義に変更する場合は、株主総会の承認が必要です。
利益相反取引を防ぐ目的で法律上求められる手続きだからです。
自分ひとりの会社であっても必ず手続きを行いましょう。

法人へ車両を引き継ぐときによくある質問

法人成りに伴う車両の引き継ぎには、さまざまな手続きが伴います。
ここではよく寄せられる質問への回答をご紹介します。

法人成りに伴う車両の名義変更はすべき?

法人成りとともに法人へ車両を売却した時点で、車両は法人名義になります。

費用の全額を経費計上するには、個人名義から法人名義へ変更しましょう。

法人へ車両を引き継いだときの消費税の取扱いは?

法人へ引き継ぐ車両の販売価額は消費税の対象になります。

法人へ車両を売却した利益の有無に関係ありません。
というのも、そもそも消費税は売却益ではなく売却収入を売り上げとして認識するからです。

つまり、その売却収入が課税売り上げとして未計上であれば、計上漏れとなってしまいます。

個人事業主として免税事業者でない限り、車両を引き継いだ年度の消費税は納税する必要がありますのでご注意ください。

法人へ自動車保険の等級は引き継げるの?

結論、いくつかの条件を満たせば加入できます。

たとえば、

・記名被保険者が同じ
・新しく設立された法人である
・個人事業主としての事業と同じ内容である
・法人設立した段階で自動車保険に加入している

などの条件です。

しかし、これらは保険会社により異なる場合があります。
また、引受審査の基準が改訂されることで変更される場合もありますし、そもそも通販型の損害保険会社では取り扱いがないケースも。

事前に保険会社や保険代理店に相談することをおすすめします。

まとめ

今回は法人成りに伴うの車両の引き継ぎ方法についてお話ししました。

内容は下記にまとめましたので、確認しておきましょう。

法人への車両の引き継ぎは『売買契約』による譲渡がおすすめ
きちんと売買契約書や時価のわかる見積書などを残す
法人は個人よりも減価償却するうえで有利な点が多い
引き継いだ車両の名義変更は、必要書類を整えて法人のある所在地の運輸局で行う

『売買』では、時価の計算に使った見積書などは必ず保存しておきましょう。
『賃貸借』『使用貸借』では、使用状況のわかる書類などを作成しておきましょう。

いずれの引き継ぎ方法でも、個人・法人間で契約書の作成はお忘れなく。

税務調査では詳しく実態について調べられるので、きちんと説明できるように対策しましょう。

本記事を参考に、車両の使用状況や実態なども踏まえ、ご自身にあった適切な方法を選んでくださいね。



関連コラム:【法人成り】資産の引き継ぎ方法でお困りの方へ【もう悩まない】
関連コラム:個人事業主が法人成りしたときの注意点


監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属


大学卒業後、一般企業を経て
 平成15年4月 シン中央会計 入社
 平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
 平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任

主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。


※本サイトに掲載の内容は、令和5年6月現在の法令に基づき作成しております。

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